【ルトガー・ブレグマン】「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」第9章

オランダ出身の歴史家でジャーナリストであるルトガー ・ブレグマン(Rutger Bregman)の「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」を、各章ごとに紹介しています。

第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?

第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい

第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる

第4章 ニクソンの大いなる撤退

第5章 GDPの大いなる詐術

第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代

第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば

第8章 AIとの競争には勝てない

第9章は、貧困を解消するには移民政策こそが有益であるという、国境の自由化に関する内容です。

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

ルトガー ブレグマン 文藝春秋 2017-05-25
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第9章 国境を開くことで富は増大する

労働の国境を開けば65兆ドルの富が増える

第一次世界大戦以前、パスポートを発行する国は少なく、ロシアやオスマン帝国などのパスポートを発行する国は、遅れた国とみなされていました。

しかし戦後は、スパイ防止や、兵として徴収するために国民を国外に逃さないために国境を封鎖するようになり、1920年のパリ会議で、各国がパスポートの使用に合意することにより、現在のようなパスポートの仕組みが出来上がりました。

パスポートの歴史は100年にも満たないのです。

ルトガー・ブレクマン 隷属なき道

人以外は、国境が障壁とならないグローバリゼーション

現在、母国外で暮らす人は、世界人口のわずか3%。

人以外は、自由に行き来できるグローバリゼーションは、中流の仕事を奪い、給料を減らし続けています。

人が、もしも国境を自由に行き来できるようになると、富は1000倍の65兆ドル増えるのです。

貧困に関して言えば、国境こそが、差別をもたらす最大の要因となっているのです。

アメリカの貧困者は、世界人口の最も豊かな14%に属しています。

アメリカで中央値の賃金を得る人は、世界で最も豊かな4%に属しています。

この数字は、https://www.givingwhatwecan.org/ が自動的に計算してくれます。

下の図は、日本人で毎月10万円の収入で設定したときに表示されたものです。

実際には、もっと多岐にわたって表示されますので、ご自分で試してみてください。

ルトガー・ブレクマン 隷属なき道
https://www.givingwhatwecan.org/

日本では、月収10万円は貧困とはいえないまでも、首都圏で、家賃を払って生活するのは困難を極めるレベルです。

しかし、世界のなかで比較すれば、貧困とは言えず、むしろ豊かなほうに入ります。

望ましい国に生まれた人が21世紀の真のエリート

ソマリアの幼児が5歳までに死ぬ確率は20%。

アメリカの前線兵士の死亡率は、南北戦争で6.7%、第2次世界大戦で1.8%、ベトナム戦争では0.5%でした。

国が違うだけで、死亡率にこんなに大きな違いが現れます。

アメリカ人は、ボリビア人の3倍、ナイジェリア人の8.5倍稼ぎます。

この数字は購買力の差と一致しており、基本的な生産性が等しい労働者の賃金に及ぼすアメリカ国境の影響は、かつて測定されていたいかなる形の賃金差別(性別、人種、民族差別)より大きい、というのが経済学者の認識となっています。

このことは、もっとも豊かな国・アメリカで働けるかどうかで、稼げる金額が異なることを示しています。

しかし、先進国の移民政策は、テロを理由に、むしろ後退しているというのが現状です。


移民にまつわる7つの誤謬(まちがい、あやまり)

移民は皆、テロリストだ

ウォリック大学が145カ国の移民について研究・調査では、移民はテロの減少に結びついていることがわかりました。

ある国から、他の国に渡った移民は、新しいスキル、知識、視点を持ち込みます。

経済発展が、過激思想の減少につながるという見方を認めるのであれば、移民の増加は、社会に良い影響をもたらすことが期待できます。

移民は皆、犯罪者だ

アメリカ国内の不法移民は、1990年から2013年の間に3倍増え、1100万人を超えましたが、彼らの犯罪率は大幅に減少しています。

イギリスも同様で、東欧から大量の移民が流入した地域で犯罪率が著しく低下しています。

オランダの研究でも、民族的背景と犯罪のつながりは全くないことが判明しました。

若者の犯罪は、育った環境が原因であり、貧しいコミュニティで育った若者が犯罪に走りやすいのです。

移民は社会の一体化を蝕む

2000年に、社会学者のデビッド・パットナムが発見した「コミュニティが多様だと、人は互いを信用しようとせず、友情を築きにくく、ボランティア活動にもあまり参加しない」という説は、実はあやまりであることが、後に判明しました。

現代社会が一体性に欠けるのは、貧困、失業、差別といったことが原因であり、多様なコミュニティに暮らす人たちは、多くの場合、このような不利な状況に直面しやすいのです。

移民が仕事を奪う

求人市場は椅子取りゲームのようなものだと、多くの人が考えていますが、実際にはそうではありません。

男性や若者など勤勉な市民の職を、生産力のある女性や高齢者が奪うことはありません。

移民も同様で、職業のすみわけが起こります。

そして、労働者が増えると、むしろ雇用の機会が増加。

消費が増え、需要が増え、そして仕事が増えるのです。

移民の安い労働力のせいで、わたしたちの賃金が下がる

移民に反対するシンクタンク(移民研究センター)は、皮肉にも、移民が賃金に影響を及ぼさないことを発見しました。

1999年から2000年にかけて、世界銀行の研究者は、未熟練労働者は、より生産的的で良い教育を受けた移民よりも賃金が安くなることを明らかにしましたが、一方で、未熟練労働者の向上心を刺激する効果もあると指摘しました。

移民の流入は、国内労働者の収入の微増をもたらすことがありますが、移民を雇わなければ、結局は仕事を他国(賃金の安い!)に委託することになり、むしろ賃金の低下につながるのです。

移民は怠惰で働かない

少し前に、イギリスのセーフティネット目当てで移民が流入しているというニュースがありました。

しかし、強力なセーフティネットのある国のほうが移民を引き付けるという根拠はなく、収入と仕事の状況を是正すれば、移民に対する公的支援も減少することがわかっています。

オーストリア、アイルランド、スペイン、イギリスでは、移民は自国民よりも多くの税金を払っているのです。

それでも心配ならば、入国してから最低限の年数が経つまで公的な支援を受ける権利を認めないとか、税金を5万ドル以上払ってからでなければ認めないといった法的措置をとるべきだと、著者は提案します。

また、移民が政治的脅威になったり、社会に溶け込まなかったりするのであれば、言語と文化のテストを行うとか、投票権を与えないという措置を取ればよいとし、それでも移民が仕事に就こうとしないのであれば、母国に送還すれば良い、と説きます。

移民は決して母国に戻らない

1960年代に7000万人のメキシコ人が国境を越えてアメリカに行きましたが、そのうち85%はやがて帰国しました。

しかし、9・11以降、国境警備が強化されたことにより、帰国者は7%にまで減少してしまいました。

警備が強化されたために、不法移民はリスクを恐れるあまり、国境を超える回数を最小限にしたと考えられています。

世界で最も豊かな国・アメリカは移民が建国した

アメリカの繁栄が、移民によっていることは周知の事実だと思います。

先進国が3%多く、移民を受け入れると、世界の貧困者が使えるお金は3050億ドル多くなると、世界銀行の科学者は計算しています。

世界人口の7億人が、可能なら別の国に移住したいと考えているのです。

そして、ここ20年に中国で起こった、農村から都市部への数億人の「移民」が、中国の繁栄をつくったことは記憶に新しいでしょう。


第10章に続きます。



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