【柚月裕子】「盤上の向日葵」

盤上の向日葵」読了。

NHKのドラマ『盤上の向日葵』をみて、むしょうに原作を読みたくなって、手に取りました。


千葉雄大さんが、とても難しい役柄を演じていて、なんだか今までの千葉雄大さんとは一味ちがいます。





前半は読まなくてもいいくらい

盤上の向日葵」は、書籍の厚さが3センチ近くある大著ですが、前半は必要ないくらい、刑事のどうでも良い話が続きます。

いちおう、事件の核心である将棋のコマを追いかけるストーリーなのですが、読んでいてムダなエピソードが多いというか・・・。

NHKのドラマ化にあたっても、このあたりのエピソードはほとんど消え去っています。

読み終わってから、連載ものだったことを知りましたが、前半の刑事モノは、映画化された「孤狼の血」を意識したのかもしれませんね。



緊迫感のある将棋戦

後半は、前半とは打って変わった、緊迫感とスピード感があります。

ただし、将棋を知らない私には、なんのことやら???ですが、人間関係や勝負事の重々しさなどは、伝わってきます。

とくに、死期を前にした東明重慶との将棋のシーンには、かなりの重みを感じました。

死にそうなのに、なお将棋を指すという行為に、胸がつまります。

また、父を殺そうとする上条桂介の葛藤も、すごく伝わってくるのです。

前半がなければ、もっとスピード感のある作品となったのではないでしょうか。





「狂った血」とは?

原作の「盤上の向日葵」では、主人公の上条圭介は新幹線のホームから飛び込み自殺を図ります。

たぶん死んでしまうのでしょう。

そもそも、自殺するための動機として「狂った血」というキーワードが登場します。

原作の「盤上の向日葵」では、上条圭介が近親相姦のすえに生まれた子どもであること、そして母も父も自殺していることなどが背景として語られます。

横溝正史ばりの設定に、日本の家族関係とか、人間関係などの色彩を感じますが、でも、そんなエピソードが必要なのかな?と思います。

母が自殺しただけでも、十分、自殺する動機になると思うんですが、なぜ母が自殺したのかの理由が欲しかったんでしょうか。

自殺の理由なんか、どうにでもなったと思うんですが・・・。


地方都市ならではの人間関係

山形県山形市在住の著者・柚月裕子さんは、地方に暮らす人々について、神経質なぐらいに表現しています。

例えば、将棋のコマを追いかける刑事たちは、地方都市にでかけますが、刑事が出入りすることで噂話にされてはかなわない、とばかりに人目を気にします。

同様に、主人公の両親が、地方の名家に生まれ育ったから、血筋の近い者同士での婚姻が続いたという設定になっています。

こういう話は、昔からあることであって、21世紀とはいえ地方ではありそうなことばかりです。

さすがに、血筋の近い者同士での婚姻はなくなっているでしょうが、人目を気にするのは、地方では当たり前のことであり、作者が普段から感じているストレス7日もしれません。

ドラマのほうは、今夜が最終回です。

どんな終わり方になるのか、とても楽しみです。




ドラマ最終回を見て追記

さきほど、最終回を観ました。

予想通り、原作とは異なる終わり方でした。

というより、原作を上回るドラマだったのではないでしょうか。

東明重慶と上条圭介との因縁や関係、そして何よりも、上条圭介が再起できる可能性を描いたことが、原作を読んでいてなお、しっくりきました。

最近は、原作を上回るドラマが多いので驚きませんが、ドラマのほうがわかりやすく、そして理解しやすい展開として描かれたようです。

視聴者が望んでいる終わり方、といっても良いと思いますが、ハリウッド映画的になってきているのかもしれません。


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