【阿部智里】『望月の烏』

八咫烏シリーズの10作目『望月の烏』読了。


2012年にはじまったシリーズですが、いつも読み応えがあります。

2024年4月にはアニメもスタートするので、とても楽しみです。




2年ぶりの新作

烏の緑羽』以来、ただしくは1年半ぶりの新作となります。

前作は、真の金鳥であったのに殺害された奈月彦の異母兄・長束とその関係者の物語でした。

望月の烏』は、奈月彦の娘・紫苑の宮であることを隠して、朝廷の官吏となった澄生(すみき)と、奈月彦のの異母弟で金鳥代となった凪彦を中心に、物語が進みます。

つまり、物語の時間経過でならべると、『追憶の烏』につづくのが、『望月の烏』ということになりそうです。

約2年ぶりに手に取ったので、いろいろと記憶が薄れてしまっていましたが、読み進めるうちに、どんどん記憶が戻ってきました。

人気シリーズというものは、そんなものなのかもしれません。



凪彦の后選び

烏に単は似合わない』では、奈月彦の后選びが物語の中心となっていましたが、『望月の烏』は、凪彦の后選びが物語の半分を占めています。

すでに大貴族四家のあいだで、皇后となるもの、側室となるものが決まっているような状態です。

凪彦は、黄烏として政治の実権を握る雪斎(雪哉)の言う通りに動くしかありません。

ところが、下級官吏となった澄生(紫苑の宮)と出会ったことにより、山内の実情を知り、みずから動く決断を下すようになります。

望月の烏』は、凪彦の成長物語のようでもあります。

いっぽう、凪彦に大きな影響を与える澄生(紫苑の宮)は、やりすぎて官吏を首になり、凪彦の側室へと推挙されることに。

しかし、澄生(紫苑の宮)は、自殺に見せかけて行方をくらましてしまいます。

そんな折、山内を内包する山の権利が手に入ることになるのです。

これは、外界で山の権利を所有した安原はじめが登場する『楽園の烏』とつながってきます。

安原はじめの父は、地下街を統治した朔彦だということが判明しているので、次作は、山内と外界の関係が、さらに明らかになってくるのかもしれません。

八咫烏シリーズも10作となり、そろそろ年表がほしいところです。

どなかお作りいただけないでしょうか。


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