【ルトガー ・ブレグマン】「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」第2章

オランダ出身の歴史家でジャーナリストであるルトガー ・ブレグマン(Rutger Bregman)の「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」を、各章ごとに紹介しています。

第一章はこちら

いよいよ第2章はベーシックインカムについてです。

AI(人工知能)の導入でもっとも影響を受けるのは、中産階級のホワイトカラーだと言われている今、真剣に議論されているベーシックインカムです。

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

ルトガー ブレグマン 文藝春秋 2017-05-25
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第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」の第2章は、2009年におこなわれた、ロンドンのホームレスに3000ポンドを給付する実験の紹介からはじまります。

「ホームレス対策費の最も効果的な使用法は、彼らにそのお金を与えることだ」

これはイギリスのエコノミスト紙が、この実験に下した結論です。

ロンドンでホームレスにフリーマネー(使い道を限定しないお金)を渡す実験は、ロンドンの中心部シティを根城にする13人に対して実施されました。

それまで、この13人のホームレスのために、毎年40万ポンドが支払われていました。

その内訳は、社会福祉費や警備費、訴訟費用などです。

しかし、13人のホームレスに3000ポンドを与えたところ、実験から1年半後には7人が屋根のある生活になり、さらに2人がアパートを借りようとしていました。

なかにはガーデニング教室に通いはじめた元ヘロイン患者もいます。

彼らは、3000ポンドのうち平均800ポンドしか使わず、その使い道も電話や辞書、補聴器などでした。

これらの費用は総額で年間5万ポンド。

13人のホームレスを変えるためには、8分の1の費用で済むことがわかりました。

フリーマネーは経済全体の潤滑油として機能する

社会福祉システムでは、就労を重視する傾向にあり、そのためのプログラムがたくさん用意されています。

しかし実際には、就労のためのセミナーに何時間も参加し、お金をかけるよりも、フリーマネーを渡したほうが良いということが証明されつつあります。

フリーマネーは人を怠惰にはしません。

むしろ、人は選択の自由を得ることになります。

マンチェスター大学の研究では、フリーマネー送金プログラムの利点として、
  1. 各家庭がお金を上手に利用し、
  2. 貧困が減少し、
  3. 収入・健康・税収の面でさまざまな長期的利益がもたらされ、
  4. プログラムにかかるコストは他の方策より少ない
と分析しています。

ベーシックインカム法案を提出したニクソン大統領

ベーシックインカムを導入できるほどに豊かになった1970年代、アメリカではニクソン大統領がベーシックインカム導入を目指して法案を提出しました。

しかし、過去の間違った統計情報や、ウソの報告書をうのみにしてしまい、結局ベーシックインカム法案は実現しませんでした。

ところで1948年には、世界人権宣言25条において、ベーシックインカムの実現を約束しています。

それは、所得を得る権利としてのユニバーサル・ベーシックインカムとしてです。

なぜベーシックインカムを選択すると良いのでしょうか。

貧しい人々に生産性の低い労働力を強いる官僚のムダを一掃し、複雑な税額控除を廃止し、シンプルな新システムに資金を流すことができるからです。

社会政策を専門とするイギリスの理論家・リチャード・ティトマスは「貧しい人だけのための制作は、貧しい政策である」と断じています。

幅広い層を対象とするプログラムを持つ国ほど、貧困の削減に成功してることがわかっています。

なぜなら、人は、その恩恵が自分にも及ぶ場合に協力的になるからです。

万人向けの、無条件のベーシックインカムは万人の支持を得ることになります。

たとえば日本で、国民一人当たり50万円のベーシックインカムを1億3000万人に導入すると、65兆円になります。

国家予算が100億円を超えるくらいなので、国民一人あたり50万円のベーシックインカムは無理があるかもしれませんが、現状の社会保障費35億円と同程度なら、国民一人当たり年間25万円のベーシックインカムが可能になります。

3人家族なら年間75万円になります。

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福祉システムは支配と屈辱を人々に負わせる

計画・管理・所得比例給付など、現在の福祉システムでは当たり前とされていることが、実は逆効果であることを、数々の事例を紹介しつつ、証明していきます。

貧困とは現金がないことで、愚かだから貧困になったわけではありません。

ベーシックインカムは、自称専門家が、貧しい人にとって必要と考えて用意したモノではなく、当事者が自分にとって必要なモノを買うためにお金を使えるようになること。

現在の福祉システムは、費用のかさむことばかりが行われています。

  • 役人がフェイスブックで支援対象者を監視し、お金の使い道をチェック
  • 生活保護では、複雑な書類作成と審査や検査に、大量の役人を動員

それなりの給与の人間が大勢、わずかな支給額のためによってたかって作業するのが福祉システムなのです。

なぜこんなに複雑で面倒な仕組みになっているのかといえば、「貧困層は愚かである」「自分で考える能力がない」という上から目線の決めつけが、根底にあるためです。

その結果、福祉システムは、屈辱を与え、誇りを失わせるものになっている、と著者は主張します。

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ベーシックインカムは人を積極的にする

そして、ベーシックインカムについては、人々が働かなくなると思い込んでいる官僚によって阻まれています。

しかし、ベーシックインカム(フリーマネー)を受け取った人々は、以前よりよく働き、より多く購入し、さらに成長と昇進の機会がある仕事を積極的に求めるようになります。

これも日本に当てはめて考えてみると、よくわかります。

わたしたち国民に、一人当たり25万円が与えられたとき、人は何に使うでしょうか?

働かないで生活できる金額ではありません。

レジャーに使う人もいれば、レベルアップのための勉強に使う人もいるでしょう。

いずれにせよ消費活動が活発になり、これによって雇用と収入の増加が見込めるというのです。

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資本主義はベーシックインカムの導入を目指すべき

現在の社会保障制度は、一家の働き手が男性で、一生涯、同じ企業で働いていた時代の産物。

年金システムと雇用保険が役立っているのは、今も定職についている人だけです。

そして、定職についている中流階級でさえ、この数十年のあいだに、借金を増やすことで消費力を維持しているというありさまです。

職場がフレキシブルになり、一生涯、同じ会社にいることがなくなってきています。

グローバリゼーションのために、中流階級の給与水準は下がっています。

そして、AI(人工知能)の発達のために、かつてないほどに職を失う人が大量にでてくる恐れがあります。

いまほど、普遍的で無条件のベーシックインカムが求められている時代はないのです。

そして、第1章で示した通り、産業革命以降、世界経済は250倍、一人当たり実質所得は10倍にまで増加しています。

これは、個人の努力で成し遂げられたというものではなく、制度・知識・先人が積み重ねてきた社会資本などのおかげで豊かになり、わたしたちは豊かでいられます。

その根本には資本主義が横たわっています。

資本主義は発展しすぎて、これからどこへ向かうのか、わかりません。

しかし、そのひとつの選択肢として、国民全員を対象としたベーシックインカムがあるというのです。


第3章につづきます。


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第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章 真実を見抜く1人の声が、集団の幻想を覚ます
終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること

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