オランダ出身の歴史家でジャーナリストであるルトガー ・ブレグマン(Rutger Bregman)の「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」を、各章ごとに紹介しています。
第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章では、新しいアイデアを提唱する人、信念を持つ人が周囲からの圧力とどのように付き合うのか、という内容です。
ルトガー・ブレグマン自身が、ベーシックインカムの導入を支持する人として世界的に認知されている今、著者自身の戸惑いや不安などが、この10章と最後の終章では吐露されています。
この研究では「認知的不協和」という知見が得られ、現在では広く知られています。
この研究によって明らかになったことは、信念を持つ人を変えるのはむずかしい、という事実です。
このような人に対して、数字を見せて事実を説明しても、彼らはその数字の出所をうたがいます。
論理的に説明しても、彼らはその要旨が理解できません。
このように、ある種の信念を持つ人が、深く信じることと現実が対立すると、自らの世界観を改めるより、現実を再調整するほうを選び、それまで以上にその世界観を信じるようになります。
これを「認知的不協和」といいます。
1954年12月21日に世界が終ると信じている集団の場合、宇宙からのメッセージを受け取っている主婦が、なぜ世界が終わらないかの理由を説明することによって、現実を再調整しました。
教育は、自説を裏付ける主張や専門家、研究を見つける道具を与えることになるためです。
政治やイデオロギー、宗教に関する信念には、きわめて頑固になります。
また、刑罰や婚前交渉、地球温暖化では、自分と異なる意見に耳を貸そうとしません。
なぜなら、自説を翻すと、自らのアイデンティティや、教会や家庭、友人の輪といった社会集団での自らの位置づけが、揺らいでしまうからなのです。
突然の衝撃(事件、事故、災害など含む)が、人の意見に対して驚くべき働きをします。
人の世界観は、外からかかる圧力があまりに強くなると、一気に崩壊してしまいます。
アメリカの心理学者のソロモン・アッシュは、集団の圧力がかかると、人はその目で見ていることが見えなくなることを実証しました。
しかし一方で、反対する1人の声がすべてを変えることも発見しています。
「政治的に不可能」に見えるアイデアも、いつの日か「政治的必然」になる可能性がある。
現実のものであれ、認識上のものであれ、危機のみが真の変化をもたらす。
危機に際してとられる行動は、すでにそこにあるアイデアによって決まる。
フリードマンのこれらの言葉が現実になったのが、1973年10月にはじまった石油危機でした。
ケインズ理論ではおこるはずがない、不況なのに物価が上昇するというスタグフレーションが起こります。
フリードマンは、すでにスタグフレーションを予測していました。
新自由主義のグループ(モンペルラン・ソサエティ)からは8人のノーベル賞受賞者が誕生し、1970年代後半にはレーガン大統領とサッチャー首相によって引き継がれます。
それまでは、過激な傍流とみなされていた新自由主義のアイデアは、その後の世界を支配するようになったのです。
ケインズは、アイデアの他に世界を支配するものはほとんどない、と言っています。
終章に続きます。
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第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章 真実を見抜く1人の声が、集団の幻想を覚ます
終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること
第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章では、新しいアイデアを提唱する人、信念を持つ人が周囲からの圧力とどのように付き合うのか、という内容です。
ルトガー・ブレグマン自身が、ベーシックインカムの導入を支持する人として世界的に認知されている今、著者自身の戸惑いや不安などが、この10章と最後の終章では吐露されています。
隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働 | ||||
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第10章 真実を見抜く1人の声が、集団の幻想を覚ます
人は信念が揺らぐような経験をするとどうなるか?
レオン・フェスティンガーの「予言がはずれるとき(1956年刊)」では、1954年12月21日に世界が終ると信じている集団について紹介されています。この研究では「認知的不協和」という知見が得られ、現在では広く知られています。
この研究によって明らかになったことは、信念を持つ人を変えるのはむずかしい、という事実です。
このような人に対して、数字を見せて事実を説明しても、彼らはその数字の出所をうたがいます。
論理的に説明しても、彼らはその要旨が理解できません。
このように、ある種の信念を持つ人が、深く信じることと現実が対立すると、自らの世界観を改めるより、現実を再調整するほうを選び、それまで以上にその世界観を信じるようになります。
これを「認知的不協和」といいます。
1954年12月21日に世界が終ると信じている集団の場合、宇宙からのメッセージを受け取っている主婦が、なぜ世界が終わらないかの理由を説明することによって、現実を再調整しました。
高い教育を受けた人ほど信念が揺るぎにくい
エール大学の研究では、高い教育を受けた人ほど信念が揺るぎにくいことがわかっています。教育は、自説を裏付ける主張や専門家、研究を見つける道具を与えることになるためです。
政治やイデオロギー、宗教に関する信念には、きわめて頑固になります。
また、刑罰や婚前交渉、地球温暖化では、自分と異なる意見に耳を貸そうとしません。
なぜなら、自説を翻すと、自らのアイデンティティや、教会や家庭、友人の輪といった社会集団での自らの位置づけが、揺らいでしまうからなのです。
強い圧力で一気に崩壊する世界観
しかし、イリノイ大学の政治学者ジェイムズ・クリンスキーによると、受け入れがたい事実であっても、それを真正面からぶつけられると、人は意見を変える可能性が高いことがわかっています。突然の衝撃(事件、事故、災害など含む)が、人の意見に対して驚くべき働きをします。
人の世界観は、外からかかる圧力があまりに強くなると、一気に崩壊してしまいます。
アメリカの心理学者のソロモン・アッシュは、集団の圧力がかかると、人はその目で見ていることが見えなくなることを実証しました。
しかし一方で、反対する1人の声がすべてを変えることも発見しています。
ハイエクとフリードマンの新自由主義(ネオリベラリズム)
ミルトン・フリードマンは、次のような言葉を残しています。「政治的に不可能」に見えるアイデアも、いつの日か「政治的必然」になる可能性がある。
現実のものであれ、認識上のものであれ、危機のみが真の変化をもたらす。
危機に際してとられる行動は、すでにそこにあるアイデアによって決まる。
フリードマンのこれらの言葉が現実になったのが、1973年10月にはじまった石油危機でした。
ケインズ理論ではおこるはずがない、不況なのに物価が上昇するというスタグフレーションが起こります。
フリードマンは、すでにスタグフレーションを予測していました。
新自由主義のグループ(モンペルラン・ソサエティ)からは8人のノーベル賞受賞者が誕生し、1970年代後半にはレーガン大統領とサッチャー首相によって引き継がれます。
それまでは、過激な傍流とみなされていた新自由主義のアイデアは、その後の世界を支配するようになったのです。
ケインズは、アイデアの他に世界を支配するものはほとんどない、と言っています。
終章に続きます。
<関連の投稿>
第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章 真実を見抜く1人の声が、集団の幻想を覚ます
終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること
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