【ルトガー・ブレグマン】「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」第8章

オランダ出身の歴史家でジャーナリストであるルトガー ・ブレグマン(Rutger Bregman)の「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」を、各章ごとに紹介しています。

第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?

第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい

第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる

第4章 ニクソンの大いなる撤退

第5章 GDPの大いなる詐術

第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代

第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば

第8章では、いよいAI(人口知能)についてです。

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

ルトガー ブレグマン 文藝春秋 2017-05-25
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第8章 AIとの競争には勝てない

AIとロボットが中流の仕事を奪う

現代は、時間と富の再分配、そして労働時間の短縮とベーシックインカムの導入が必要な時代になっていることを、第7章まで、繰り返し主張してきた著者のルトガー・ブレクマン。

第8章では、AIとロボットの登場によって、その必要性がさらに大きくなっていることを示しています。

いまやロボットは、構造的な失業と不平等を拡大させ、ベーシックインカム導入の最大の理由となっているのです。

アメリカでは、1969年から2009年までの間に給料が14%さがりました。

日本でも同様のことが起こっていますが、これは長引く不況や低成長のためだけではないのです。

先進諸国では、生産性が伸び続けているにもかかわらず、ほとんどの職種で賃金は上昇していません。

なぜなら、仕事がどんどん減ってきているからです。

品物やサービス、資金が、かつてないほどのスピードで世界を駆け巡るようになったからです。

安い賃金の国に工場をアウトソースし、先進国の本社はR&Dだけが残されているという事例は少なくありません。

そして、オペレーションを行う会社は、法人税の安い国や、タックスヘイブンで運営しているのです。

これらを象徴するのが、「ムーアの法則」であり、輸送用コンテナが1950年代に標準化されたことなのです。



ムーアの法則とは?

ムーアの法則(Moore's law)とは、インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが、1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」と唱えた経験則のことです。

ICチップの性能が高くなり、しかも低価格化することを予測しました。

「部品あたりのコストが最小になるような複雑さは、毎年およそ2倍の割合で増大してきた。短期的には、この増加率が上昇しないまでも、現状を維持することは確実である。より長期的には、増加率はやや不確実であるとはいえ、少なくとも今後10年間ほぼ一定の率を保てないと信ずべき理由は無い。すなわち、1975年までには、最小コストで得られる集積回路の部品数は65,000に達するであろう。私は、それほどにも大規模な回路が1個のウェハー上に構築できるようになると信じている。」 "Cramming more components onto integrated circuits", Electronics Magazine 19 April 1965[1]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

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1950年代に輸送用コンテナが輸送の標準単位となる

コンテナを利用するようになり、港での荷下ろしと荷積みに4日~6日かかり、輸送日数の50%を占めていましたが、コンテナが標準単位となったことで数時間で済むようになり、輸送日数の10%までに減少しました。

ルトガー・ブレクマン 隷属なき道

テクノロジーの進歩が給与の減少を招く

先進工業国では、給与が減少しています。

その原因として、労働組合の弱体化、金融部門の成長、資本税の削減、アジア各国の台頭、そしてテクノロジーの進歩があげられますが、なかでもテクノロジーの進歩は、最も給与の減少を招いています。

シリコンバレーで起こった革新(イノベーション)が、他の場所で大量の解雇者を生み、アマゾンは世界中の、数百万という小売業を廃業に追い込んでいます。

世界は、相互に依存関係にあり、その関係はより深まってきています。

世界が小さくなればなるほど、勝者の数は少なくなり、数少ない勝者がひとり勝ちする社会になります。

グーグル、アマゾン、フェイスブックなど、インターネット時代に興った企業が、世界中を席巻し、ひとり勝ち状態にあることは、読者でなくともよく知っている事実です。

このことは、何を示唆しているでしょうか?

現在では、ビジネスの創出に必要な人間の数は少なくなっている、ということです。

工場でモノをつくる産業とは異なり、設備投資も少なく、働く従業員の数も数人から数十人で、莫大な売上をあげることができる時代となりました。

そして、少ない人数で、そこから生まれる大きな利益を分かち合う時代へと変わってきているのです。

生産性は過去最高、雇用は減少というパラドックス

1957年に、経済学者のニコラス・カルドアは、「資本と労働が国民所得に占める割合は長期的に安定している」と説きました。

国民所得の2/3が労働者の給与となり、1/3が資本家に入る、というものです。

かつて、資本と労働の比率は不変だとされていましたが、いまでは14%も給与は減っています。

20世紀の間、生産性の伸びと雇用の伸びは、ほぼ平行でしたが、21世紀にはいり、ロボットの成長スピードがあがり、平均収入が落ち、雇用(給料)が減る「グレート・デカップリング」の状態にあります。

第一次産業革命時代にも、機械が人々の仕事を奪ってきました。

このときの産業革命では、主に機械は、人間の筋力を代替するものでした。

1765年にジェームズ・ワットが蒸気機関の効率を上げる方法に気づき、これを具現化した1776年までに、炭鉱から深さ18メートル分の水を60分で排出できるようになりました。

このころは、機械には人がやりたくない仕事を任せればよかったのですが、AIではそうもいきません。

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知的能力も代行するAI

かつてコンピュータは職業の名称だったそうです。

単純計算を繰り返す仕事でしたが、この仕事は電卓にとってかわられました。

いまでは、2045年には、コンピュータは全人類の脳の統計より10億倍も賢くなると考えられています。

ムーアの法則のおかげで、低価格で高品質のスーパーコンピュータが手に入るようになった今、人間にしかできないと考えられていた知的な業務さえ、AIが代行する時代となっています。

いまでも、高度な技術を要する仕事と、そんな技術を要しない仕事の割合は安定していますが、その中間にある、平均的な技術を要する仕事は減ってきているのです。

これにより「中流」は消滅し、ロボットという「プレカリアート」が出現するというのです。

プレカリアートとは?

経済学者のガイ・スタンディングは「政治的発言力を持たない低賃金の非正規雇用者からなる階級」と定義しました。

第2次産業革命(機械化時代)の救済策とは?

社会が経済的に豊になればなるほど、労働市場における富の再分配はうまくいかなくなります。

仕事が減っている人間に対して、労働時間の短縮と、ユニバーサル・ベーシックインカムは必須になっていると著者は説きます。

そして、生きていくには働かなければならない、という考え(ドグマ)を捨てなければならない、と主張します。


第9章につづきます。


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