【ルトガー・ブレグマン】「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」終章

オランダ出身の歴史家でジャーナリストであるルトガー ・ブレグマン(Rutger Bregman)の「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」を、各章ごとに紹介しています。

第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?

第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい

第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる

第4章 ニクソンの大いなる撤退

第5章 GDPの大いなる詐術

第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代

第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば

第8章 AIとの競争には勝てない

第9章 国境を開くことで富は増大する

第10章 真実を見抜く1人の声が、集団の幻想を覚ます

終章では、アイデアの見せ方によって第三者からどのようにみられるのか、についてです。

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

ルトガー ブレグマン 文藝春秋 2017-05-25
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終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること

いまや左派と呼ばれる人は、世界的に減少しています。

そして、何にでも反対する人々になりさがっています。

ネオリベラルが論理、判断、統計のゲームを制し、左派に残されたのは感情だけになってしまいました。

しかし、ルトガー・ブレグマンが提唱するベーシックインカムや労働時間の短縮などは、本来は社会主義者が中心となっていてもおかしくない政策のはずですが、彼らには語るべき物語がなく、伝える言葉も持っていません。


オヴァートンの窓とは?

1990年、アメリカの弁護士のジョゼフ・オヴァートンは、「これほど多くの良いアイデアが真剣に受け止められないのはなぜだろう?」という疑問の解明に挑みました。

その結果わかったことは、再選を望む政治家は、あまりに極端に思えるアイデアを敬遠するということでした。

権力を持ち続けるためには、自分のアイデアを人々に許容される範囲にとどめておかなければならないためです。

そのアイデアとは、専門家に承認され、統計上、支持する人が多く、法律になる可能性が高いアイデアです。

これを「オヴァートンの窓」と呼びます。

この範囲からはみ出たアイデアは、メディアから「非現実的」「無分別」との烙印を押されます。

ルトガー・ブレグマン自身が、ユニバーサル・ベーシックインカムの導入を提唱したことで、このような烙印を押されたのでしょう。

しかし、オヴァートンの窓をずらし、自分のアイデアをまともで穏当な意見のように見せることもできます。

それは、よりショッキングで破壊的なアイデアを公表して、それ以外のアイデア(本命)を比較的穏当に見せるというテクニックです。

急進的なものを穏当に見せるには、急進性の枠を広げれば良いのです。

このテクニックに長けているのがトランプ大統領だと、著者は指摘します。

2016年スイスの国民投票からベーシックインカムの議論がはじまった

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」は、2014年にアマゾンで自費出版として登場しました。

出版当時、ベーシックインカムは、ショッキングで破壊的なアイデアでしたが、2016年にスイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われたことから、本格的に議論は始まったのだと、著者は説明します。

そして、世界を変えたいのであれば、非現実的で、無分別で、とんでもない存在になる必要があると主張します。

かつて、奴隷制度の廃止はありえないことでした。

女性の選挙権も否定されていました。

同性婚の容認など許されることではありませんでした。

しかし、どれも今では当然のこととして受け止められています。

誰の、どのアイデアが正しいのか、いずれ歴史が証明してくれる、としてルトガー・ブレクマンは筆を置きました。


歴史から統計、さまざまな研究を網羅した本書のレビューはむずかしいと感じ、各章ごとに紹介する形にしました。

自分にとってのメモ書き、という意味合いもあります。

ベーシックインカムの導入は困難な課題かもしれませんが、ルトガー・ブレグマンが主張するように、複雑な福祉政策よりわかりやすく、そして仕事がどんどん減っている今、誰もが考えなければならない最重要課題であることは確かです。

これらの紹介が、本書を理解する助けとなれば幸いです。




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