【佐野晶】『クラウド Cloud』

クラウド Cloud』読了。

菅田将暉さん主演の映画『クラウド Cloud』のノベライズ本です。

転売屋を仕事にする男の物語ですが、それが元で恨まれて、襲撃されるという内容です。

3時間もあれば読めます。




転売屋

フリマなどを利用しない人には聞き慣れない転売屋ですが、安く買って高く売るというビジネスです。

転売屋は、商売の原点みたいなビジネスを、ネットで行う人々のこと。

副業でやってる人もいれば、転売屋を本業にしている人もいます。

ネットでフリマが普通になったからこそ、できるともいえる仕事です。

とはいえ、大きく儲けを出すには、それなりの知恵と工夫も必要です。

菅田将暉さん演じる主人公の吉井は、ちまちました転売から、大勝負に出て成功して、生活が変わっていきます。



都合良すぎ?

物語は、吉井が600万円の利益を出したところから、大きく動いていきます。

群馬県の山の中の家に引っ越したり、付き合っている彼女と同棲したり、さらには発送などを行うバイトを雇ってみたり。

ここで疑問に思うのは、たった600万の利益で引っ越したりするか?とか、いきなり結婚前提で同棲するか?とか、発送商品がせいぜい数十点程度でバイト雇う?とか。

物語の設定を整えるためなのか、実に都合よく進めてしまいます。

主人公の吉井は、深く考えるのが苦手な人物なのかな?と思ってしまうのです。

転売をやってるくらいだから、お金にうるさい、金銭感覚も鋭いのでは?

そんな人が、結婚はともかく、お金のかかることを積極的に進めるかな〜。

そんな疑問が湧き上がってくる導入です。



中盤は密室ホラー

山の中の一軒家に引っ越してから、誰かからの嫌がらせが激しくなっていきます。

中心地まで離れており、周囲5キロ四方に隣家がない。

これって、ホラー映画の定番の設定では?

しかも、得体の知れない男をバイトとして雇ってしまいます。

主人公の吉井は、危険察知能力の低い、鈍感人間なのかもしれません。

警察に電話レベルなのに、しないのです。

そして、いざ警察に被害届を出そうとすると、転売屋であることが理由となって被害届が出せない。

なぜなら、偽ブランド品を売ったことがあり、しかも売れ残りが家に残っているからなんです。

自分のことしか考えていないのか、吉井。

同棲してる彼女を危険に晒していいのか、吉井。

と、ツッコミたくなります。



結局のところ何?

最後は銃撃戦で、吉井チーム勝利で終わるのですが、バイトの男に次のステージに連れて行かれるところで、物語も終わります。

結局、何が描きたかったのかな〜?

ネット民の嫉妬とか妄想で襲われる転売屋?

それとも転売屋のノウハウが、闇ビジネスでも有効ってこと?

読んでおもしろいとは思いましたが、銃撃戦を映像にするために、いろいろと都合よく設定を整えたのでは?

そんな感想を持ちました。


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