森功さんのドキュメンタリー『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、Netflixドラマの原作となった新庄耕さんの小説『地面師たち』読了。
ドラマシリーズを観てから読んだのですが、どちらも読み応えのある作品でした。
ちなみに、『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』は2018年初出、『地面師たち』は2019年初出です。
様々な証言から事件を知る
フィクションとしての地面師はドラマで観ていたので、先にドキュメンタリー『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』を読みました。
このドキュメンタリーは、関係者などから丹念にあつめた証言によって構成されています。
関係者でなければ話すことができない内容が網羅されており、地面師詐欺の複雑さがよくわかります。
この作品で登場する実際の事件は、次の通りです。
- 「積水ハウス」事件
- 新橋「白骨遺体」地主の謎
- 台湾華僑になりすました「富ヶ谷事件」
- アパホテル「溜池駐車場」事件の怪
- なりすまし不在の世田谷事件
- 荒れはてた「500坪邸宅」のニセ老人
どれも、よく知られている事件のようですが、もっとも有名なのが、「積水ハウス」事件でしょう。
ドラマでも、メインの事件として登場しています。
ドキュメンタリーなので口語体、読んでいてスッと頭に入ってきますから、ドラマを観たあとにピッタリだったようです。
また、どの事件も、なぜか、よく知っているエリアが絡んでいて、自分の身近でこんな詐欺事件が起こっていたのか、とも感じました。
かつて住んでいた代々木公演周辺は、古い住宅街で、「富ヶ谷事件」の場所は、歩いて数分の距離にありました。
また、新橋「白骨遺体」地主の謎に登場する場所も、なぜか、何度も歩いた場所。
さらに、アパホテル「溜池駐車場」事件の駐車場も、仕事でよく通った場所でした。
渋谷区と港区に、それぞれ20年くらい住みましたが、どちらも住宅街を歩くと、「こんなところに廃屋?」という場所があります。
どちらも、古い商店街が残されていて、住民として住むには、昭和と平成・令和が渾然としているエリアがあり、楽しいのですが、そういうエリアだからこそ、地面師に狙われている、ということが、この作品を読むと実感できます。
ドラマのキャラ設定は小説から
Netflixのドラマでは、自分に従わない者を容赦なく殺す、いかれた人物としてハリソン山中が描かれていましたが、キャラ設定は『地面師たち』に沿っているようです。
こちらの主役は、綾野剛さんが演じた拓海であり、物語も拓海を中心に進行していきます。
ほぼ、ドラマの通りではありますが、小説版は、ちょっと甘いという印象です。
ハリソン山中は、たしかに殺人も厭わないキャラとして登場していますが、最後まで明確にはされません。
主人公の拓海は、詐欺被害に遭った被害者ではありますが、地面師詐欺ではなく、医療機器詐欺です。
つまり、ドラマ版とは、ちょっとずつ違っていて、ドラマの過激さを知っていると、小説はちょっとばかり地味です。
ドラマ版では、リリー・フランキーさん演じる刑事が、ハリソン山中に殺されますが、その実態が知られず、逮捕されても、ほとんど不起訴という人物が、自分を少しばかり付け回したからといって、殺したりするものかな?と感じました。
小説版では、刑事は無事に退職し、拓海を助けてくれます。
ドラマ版では、小説には存在しない女性刑事が登場し、やっぱり拓海を助けますから、刑事をふたりに分割したのでしょう。
ドラマでは女性がほとんど登場しないので、彩り?担当ということかも。
個人的には、ドキュメンタリーの『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』のほうがおもしろかったです。
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