『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読了。
ドラマ化されると知って調べたところ、様々な賞を受賞しているミステリと知り、読んでみました。
キャラクターの二面性がとても良く描かれている魅力的な作品です。
霊媒師としての城塚翡翠
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読みはじめて、すぐに城塚翡翠の言葉とファッションに「変だな」と感じました。
女子目線でみると、城塚翡翠の言動と、ファッションや化粧が見事に不一致なのです。
言動からは、帰国子女のお嬢様で、世間ズレしていないピュアな子どもっぽさが演出されている割に、化粧はそのときどきに合わせて変幻自在、そしてファッションに至っては「男の幻想」そのもののような印象を受けたのです。
どちらが本物なのか、と疑うよりも、これらの描写は読者をミスリードさせるためのものなのでは?と疑いたくなります。
少なくとも、女子目線で城塚翡翠を描いていないな、と感じました。
実際、エピローグを読むと、女子目線で描かれた城塚翡翠とは異なるということが判明します。
推理作家としての香月史郎
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の語り部でもある香月史郎については、その思考が描かれているにもかかわらず、容姿についてほとんど記述がありません。
城塚翡翠の容姿やファッションを事細かに描き出していることとは、あまりに対照的です。
そして、事件と事件の間に挟み込まれている「インタールード」では、連続殺人鬼・鶴岡文樹の容姿は描かれているのです。
この段階で、香月史郎=鶴岡文樹なのかも?と感じてしまいました。
とはいえ、最初の設定では、霊媒師の城塚翡翠が「見えてしまう」ホームズだとすれば、その結果に至るまでの論理的な考察を行うのが、推理作家としての香月史郎・ワトソンというわけで、この設定のおもしろさは、徹底したフォーマット(定型)管理によるものだと思います。
だからこそ、ラストエピソードでの謎解き推理が生きてくるわけで・・・。
城塚翡翠は魅力的、だけれども
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、これだけで完結してしまっていて、続編を書くのは難しい作品なのではないでしょうか。
それだけ、城塚翡翠と香月史郎のコンビが魅力的な存在だといういことであり、ラストエピソードでワトソン・香月史郎を失ったホームズ・城塚翡翠は、これからどうするのだろうと考えてしまいます。
城塚翡翠のアシスタント役の千和先真は、ホームズの手伝いをするホームレスの少年たちという役回りなので、ワトソンにはなりえません。
香月史郎以上のワトソン役となるキャラクターが生み出せれば、続編もかなり魅力的になるとは思います。
が、連続殺人犯以上のワトソンがそうそういるとも思えず・・・。
続編も出ているらしいですが、Amazonの書評ではあまり良い評価でもなく、続編を手にとることは少し待ちたいと思っています。
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