『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』読了。
「超限戦」という本の存在を知ったのは、3,4年ほど前のことでしょうか。
作家の一田和樹さんに教えていただいたのですが、その時、古書となっていた「超限戦」は2万円台。
⇒ 20年前の戦略書が日本と世界の「今」を解き明かしてくれる――『超限戦』
とても手が出ないな、と思っていたところ、昨年6月にAmazonから、角川新書で改めて出版されるというお知らせが届き、すぐに予約。
昨年11月には刊行の予定であったにもかかわらず、届いたのは2020年になってからでした。
一度でも検索すると教えてくれるAmazonに感謝です。
中国の喬良さんと王湘穂さんという方が著者で、一方は軍人さんです。
初版は1999年に中国で出され、その後、世界中の軍事関係者が手にとっていると言われています。
日本では2001年に出版されています。
中国の思想家で、21世紀にあっても読まれる孫子、韓非子など、いずれもどうやって戦争に勝つのか、ということを説いたわけで、中国から、戦争、それも最もあたらしい戦争の形である「超限戦」が登場したことは、当然の流れであるように思いました。
それによると、
つまり、自国を有利にするためには、軍事以外の事柄を含めた、すべてが戦争である、という認識を持つことが必要な時代となっているという指摘です。
本書は、1990年代に世界中で起こったこと、たとえば、ビン・ラディンのイスラム聖戦組織や、日本のオウム真理教によるテロなど、それらの事件そのものが、戦争の形を変えたと説いています。
『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』のなかには、非軍事の戦争行動として、次のようにまとめられています。
重要技術の封鎖は、ファーウェイ締め出しとも関連していますね。
これについては、日米開戦に関するアメリカの現役軍人が書いた論文に、かなり詳しいです。
⇒ 【ジェフリー レコード (著) 渡辺 惣樹 (翻訳)】アメリカはいかにして日本を追い詰めたか: 「米国陸軍戦略研究所レポート」から読み解く日米開戦
非国家組織が、非軍事手段を使って主権国家に対して仕掛けた初めての非武力戦争と位置づけています。
さらに、後半では、これらのヘッジ・ファンドによる金融戦は、米国政府・FRBとリンクしているのではないか、という推察まで披露されています。
ないことはないですね。
オウム真理教とサリン、イタリアのマフィアとインターネットなど。
中国人ならでは発想というか・・・。
北京では、「政府が雨を降らせる」と、20年以上前から言われてるので、やってやれないことはないでしょう。
そう考えると、PM2.5が中国から飛んでくるのも、地球温暖化に貢献しているのも、中国による生態戦なのかも、と思ってしまいました。
そして、これが一番ダメージがあるし、最も怖いと感じました。
インターネットでは当たり前のやり口ですね。
2・26事件のときも、いち早くラジオ局が占拠されたので、戦争においてメディア戦は、最も古い非軍事の戦争行動だと言えそうです。
途上国ではよくある話。
21世紀の主戦場はアフリカ、かな。
古代ローマ時代から行われているものですね。
敗戦後の日本では、アメリカによる文化戦が行われました。
スポーツ界では、ルール変更が多いので、これも国際法戦?
以上は、本書のなかに書かれていたものですが、考えだしたらキリがないくらい、相手をコントロールすることを大前提にすれば、なんでも非軍事の戦争行動になるということです。
「超限戦」という、軍事と非軍事にかかわらず、相手国の国力を削ぐことは可能であり、そのための手段は多様であること、というのは、主権国家はヤクザやテロリストの真似をしろ、ということでしかありません。
ビジネスにおいては、「目的達成のためには手段を選ばない」ことは、ある意味、当然のことであり、なんら違和感はありません。
むしろ、私がおもしろいと感じたのは、戦争にも黄金分割が存在する、ということでした。
黄金分割というのは、人間が美しいと感じる比率ですが、それが戦争にも存在するのだそうです。
それが、戦争の歴史をひもとくと、あちこちに出現するというのです。
そして、これを一歩進めたのが、彼らが提唱する偏正律です。
中国語の成り立ちに関係しているので、中国語がわからない私にはうまく説明できませんが、「偏をもって正を修飾する」ことです。
???
この辺は、具体的な「超限戦」思考の入口になるところなので、『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』で確認してください。
⇒ 【一田和樹】「フェイクニュース」
これは、非軍事の戦争行動のなかの、心理戦・メディア戦などにあたります。
また、ハッキングによって経済に混乱を与えることも可能になっており、たった一人が、標的国の国力を削ぐことができる時代になっています。
かりに善意であったとしても、フェイクニュースの片棒を担いでしまうこともあるため、「このニュースは本当か?」と、いったん立ち止まってみることを求められるようになってもいます。
国民が心理的に動揺することによって、間違った世論が形成され、それがパワーとなって、日本を害したいという国や勢力が有利となることは、多々ありそうです。
日本人全員が、戦争ということに対する認識を改めるためにも、本書を読むべきでしょう。
自衛隊が違憲、などという議論は、すっかり過去のものなのです。
だって、非軍事の戦争行動だけで、一国の命運を決することができる時代なのですから。
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【一田和樹 江添佳代子】「犯罪『事前』捜査」 知られざる米国警察当局の技術」
【深田萌絵】「日本のIT産業が中国に盗まれている」
【マーク・カーランスキー著 山本 光伸訳】 「塩」の世界史―歴史を動かした、小さな粒
「超限戦」という本の存在を知ったのは、3,4年ほど前のことでしょうか。
作家の一田和樹さんに教えていただいたのですが、その時、古書となっていた「超限戦」は2万円台。
⇒ 20年前の戦略書が日本と世界の「今」を解き明かしてくれる――『超限戦』
とても手が出ないな、と思っていたところ、昨年6月にAmazonから、角川新書で改めて出版されるというお知らせが届き、すぐに予約。
昨年11月には刊行の予定であったにもかかわらず、届いたのは2020年になってからでした。
一度でも検索すると教えてくれるAmazonに感謝です。
戦争に関する論文です
一田和樹さんにおおよそのことは聞いてはいたものの、『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』は、戦争に関する論文です。中国の喬良さんと王湘穂さんという方が著者で、一方は軍人さんです。
初版は1999年に中国で出され、その後、世界中の軍事関係者が手にとっていると言われています。
日本では2001年に出版されています。
中国の思想家で、21世紀にあっても読まれる孫子、韓非子など、いずれもどうやって戦争に勝つのか、ということを説いたわけで、中国から、戦争、それも最もあたらしい戦争の形である「超限戦」が登場したことは、当然の流れであるように思いました。
新しい戦争の原理とは?
本書の冒頭には、新しい戦争の原理が書かれています。それによると、
「武力と非武力、軍事と非軍事、殺傷と非殺傷を含むすべての手段を用いて、自分の利益を敵に強制的に受け入れさせる」こと。
つまり、自国を有利にするためには、軍事以外の事柄を含めた、すべてが戦争である、という認識を持つことが必要な時代となっているという指摘です。
本書は、1990年代に世界中で起こったこと、たとえば、ビン・ラディンのイスラム聖戦組織や、日本のオウム真理教によるテロなど、それらの事件そのものが、戦争の形を変えたと説いています。
目的達成のためには手段を選ばない
そして、マキャベリの「君主論」を引き合いにだし、目的達成のためには手段を選ばないこと、すなわち超限戦であると主張します。『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』のなかには、非軍事の戦争行動として、次のようにまとめられています。
貿易戦
アメリカがよく使う経済制裁が最も良い例です。重要技術の封鎖は、ファーウェイ締め出しとも関連していますね。
これについては、日米開戦に関するアメリカの現役軍人が書いた論文に、かなり詳しいです。
⇒ 【ジェフリー レコード (著) 渡辺 惣樹 (翻訳)】アメリカはいかにして日本を追い詰めたか: 「米国陸軍戦略研究所レポート」から読み解く日米開戦
金融戦
1997年に起こった東南アジア金融危機は、ジョージ・ソロス率いるクォンタム・ファンドによる金融戦だと指摘。非国家組織が、非軍事手段を使って主権国家に対して仕掛けた初めての非武力戦争と位置づけています。
さらに、後半では、これらのヘッジ・ファンドによる金融戦は、米国政府・FRBとリンクしているのではないか、という推察まで披露されています。
ないことはないですね。
新テロ戦
テロリストとスーパー兵器の出会いによって展開するテロのこと。オウム真理教とサリン、イタリアのマフィアとインターネットなど。
生態戦
川、海、地殻、南極・北極の氷、大気圏のオゾン層などの自然状態に影響を及ぼし、降雨量、気温、大気の成分、海面の高さ、日照などを改変したり、地震を発生させたりといった方法で、地球の物理的環境を破壊し、あるいは別の地域生態状況を作り出すこと。中国人ならでは発想というか・・・。
北京では、「政府が雨を降らせる」と、20年以上前から言われてるので、やってやれないことはないでしょう。
そう考えると、PM2.5が中国から飛んでくるのも、地球温暖化に貢献しているのも、中国による生態戦なのかも、と思ってしまいました。
そして、これが一番ダメージがあるし、最も怖いと感じました。
心理戦
デマや恫喝で相手の石をくじくこと。インターネットでは当たり前のやり口ですね。
密輸戦
市場を混乱させること、経済秩序に打撃をあたえることができます。メディア戦
世論の誘導が目的。2・26事件のときも、いち早くラジオ局が占拠されたので、戦争においてメディア戦は、最も古い非軍事の戦争行動だと言えそうです。
麻薬戦
他国民に災いを与え、ボロ儲けすることで、古くはイギリスによる対中国へのアヘン輸出、現代では北朝鮮による覚醒剤があります。ハッカー戦
いわずもがな、ですね。技術戦
勝手に標準を作り、専売特許を独占すること。途上国ではよくある話。
仮想戦
実力を誇示し、プレッシャーをかけること。資源戦
備蓄を奪い、財産をかすめ取ること経済援助戦
恩恵を施し、相手をコントロールすること。21世紀の主戦場はアフリカ、かな。
文化戦
当世風を持ち込み、異分子を同化させること。古代ローマ時代から行われているものですね。
敗戦後の日本では、アメリカによる文化戦が行われました。
国際法戦
先手を打ってルールを作ること。スポーツ界では、ルール変更が多いので、これも国際法戦?
以上は、本書のなかに書かれていたものですが、考えだしたらキリがないくらい、相手をコントロールすることを大前提にすれば、なんでも非軍事の戦争行動になるということです。
黄金分割と偏正律
『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』のおもしろい点は、まじめに戦争の歴史をひもとき、論じている点です。「超限戦」という、軍事と非軍事にかかわらず、相手国の国力を削ぐことは可能であり、そのための手段は多様であること、というのは、主権国家はヤクザやテロリストの真似をしろ、ということでしかありません。
ビジネスにおいては、「目的達成のためには手段を選ばない」ことは、ある意味、当然のことであり、なんら違和感はありません。
むしろ、私がおもしろいと感じたのは、戦争にも黄金分割が存在する、ということでした。
黄金分割というのは、人間が美しいと感じる比率ですが、それが戦争にも存在するのだそうです。
それが、戦争の歴史をひもとくと、あちこちに出現するというのです。
そして、これを一歩進めたのが、彼らが提唱する偏正律です。
中国語の成り立ちに関係しているので、中国語がわからない私にはうまく説明できませんが、「偏をもって正を修飾する」ことです。
???
この辺は、具体的な「超限戦」思考の入口になるところなので、『超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書) 』で確認してください。
日本人全員が読むべき書
インターネット時代において、日本を害したいという国や勢力は、フェイクニュースを流し、SNSを使って、いかようにも世論を操作することができるようになりました。⇒ 【一田和樹】「フェイクニュース」
これは、非軍事の戦争行動のなかの、心理戦・メディア戦などにあたります。
また、ハッキングによって経済に混乱を与えることも可能になっており、たった一人が、標的国の国力を削ぐことができる時代になっています。
かりに善意であったとしても、フェイクニュースの片棒を担いでしまうこともあるため、「このニュースは本当か?」と、いったん立ち止まってみることを求められるようになってもいます。
国民が心理的に動揺することによって、間違った世論が形成され、それがパワーとなって、日本を害したいという国や勢力が有利となることは、多々ありそうです。
日本人全員が、戦争ということに対する認識を改めるためにも、本書を読むべきでしょう。
自衛隊が違憲、などという議論は、すっかり過去のものなのです。
だって、非軍事の戦争行動だけで、一国の命運を決することができる時代なのですから。
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