「アメリカはいかにして日本を追い詰めたか: 「米国陸軍戦略研究所レポート」から読み解く日米開戦」読了。
この本を読むことになるきっかけは、ルーズベルト大統領が戦争をしたかったから日本は追い込まれた、という話を聞いたことです。
ルーズベルト大統領といえば、歴代大統領のなかでも人気が高く、今だに支持者がいるという人物。
しかし、ルーズベルト大統領の陰謀説は、戦後すぐから、日本ではなく、当のアメリカから出ているのです。
その専門家が、日本がアメリカに宣戦布告した1941年当時のことを、日本の視点から見直したレポートです。
そもそも、現代人のわたしたちにとっても、その当時の日本軍の決断はおろかであったとしか思えません。
しかし、このような切り捨ては、当時の日本人の心情を知らないばかりか、現代人もアメリカ人も同じ発想だといえます。
ジェフリー・レコード氏は、日本が置かれた状況を詳しく分析し、日本がアメリカに宣戦布告しなければならなかった苦境を明らかにしています。
1.恐怖心とか誇りといった感情は意思決定上の重要なファクターになる。そうした感情に合理性があるか否かとは関係がない。
2.潜在敵国の文化や歴史についての知識はきわめて重要である。
3.相手国への牽制が有効か否かは牽制される側の心理に依存する。
4.戦術よりも戦略が重要である。
5.経済制裁は実際の戦争行為に匹敵しうる。
6.道徳的あるいは精神的に相手より優れているとの思い込みは、敵の物理的優位性を過小評価させる。
7.戦争が不可避であると考えると、自らその予言を実行してしまいがちになる。
サイバー空間は戦争状態だと言われていますが、それらを語るときに出てくるのが『超限戦 21世紀の 新しい戦争』です。
面川はまだ読んでいませんが、聞くところによると、戦争は、社会を不安定にすること、信用性を傷つけることなど、多角的に行われていて、それが、フェイクニュースが蔓延する原因でもあるというのです。
ジェフリー・レコード氏が導き出した結論は、まさに『超限戦 21世紀の 新しい戦争』を思わせるものです。
著者は、最後に、経済制裁を発動することは、軽々しく決めるべきではないと、アメリカ政府に対して苦言を呈しているのです。
日本は、戦前には、アメリカからの石油に頼っていたわけですが、輸出を止めると言われて、様々な要求を突きつけられました。
石油禁輸は、戦争か、それとも大国の座から降りてアメリカに隷属するか、の二者択一を求めるものでした。
これは、現在でもありうる二者択一です。
日本は、ほとんど資源を有しない国土であるため、海外からの輸入によって経済が回っています。
輸入先の国とは仲良くしなければなりませんし、その国とは違う第3国であっても、グローバルなパワーバランスのなかで、うまく立ち回らなければ、どんな圧力が加わるのか、わかりません。
直近のことでは、イランとの関係があります。
アメリカはイランに対して経済制裁を行い、イランからの石油輸入を禁じています。
日本は歴史的な側面から、猶予されていますが、これも引き延ばせなくなりそうな勢いです。
1941年の日本と同じような立場に追い込まれている国は、北朝鮮やイランなど、現代でも少なくないのです。
むしろ、ルーズベルト政権は、明確に「戦争になる」というカードを切らずに、石油禁輸という挑発を行った、と断じています。
「他の軍事大国に対して、こちらに戦争を仕掛けさせるような外交政策をとってはならない。万一そうした政策をとるのであれば、軍事衝突を覚悟した上で実行しなければならない」
「そうした政策の結果、相手国が戦争を決意すれば、われわれに最大のダメージを与える時と場所を選べることを覚悟しておかなければならない」
著者は、日本の真珠湾攻撃について、「何も挑発していない」なかで行われたと主張するルーズベルト大統領に疑いをもっています。
イランも、いま、アメリカに挑発されているのかもしれません。
軍事の専門家は、「イランへのアメリカ(またはイスラエル)による攻撃は負の効果を生み、その結果、イランの現政権の政治力を強めることになる可能性が高い。近視眼的な見地による軍事攻撃によって得られる効果を相殺して余りあるほどのリスクが想定されるのである」と書いています。
国同士に限らず、相手を挑発し、追い詰める行為は、厳につつしむべきことなのです。
「窮鼠猫を噛む」のですから。
<関連の投稿>
【深田萌絵】「日本のIT産業が中国に盗まれている」
【一田和樹】「フェイクニュース」
この本を読むことになるきっかけは、ルーズベルト大統領が戦争をしたかったから日本は追い込まれた、という話を聞いたことです。
ルーズベルト大統領といえば、歴代大統領のなかでも人気が高く、今だに支持者がいるという人物。
しかし、ルーズベルト大統領の陰謀説は、戦後すぐから、日本ではなく、当のアメリカから出ているのです。
軍事の専門家によるレポート
原著者のジェフリー・レコード(Jeffrey Record)氏は、ベトナム戦争を経験した後に、外交政策を研究し、空軍大学で教鞭のとるなどした、軍事の専門家です。その専門家が、日本がアメリカに宣戦布告した1941年当時のことを、日本の視点から見直したレポートです。
そもそも、現代人のわたしたちにとっても、その当時の日本軍の決断はおろかであったとしか思えません。
しかし、このような切り捨ては、当時の日本人の心情を知らないばかりか、現代人もアメリカ人も同じ発想だといえます。
ジェフリー・レコード氏は、日本が置かれた状況を詳しく分析し、日本がアメリカに宣戦布告しなければならなかった苦境を明らかにしています。
合理的な判断よりも恐怖心と誇りのほうが上
ジェフリー・レコード氏は、1941年の日米開戦から、次の7つの項目を教訓として導き出しています。1.恐怖心とか誇りといった感情は意思決定上の重要なファクターになる。そうした感情に合理性があるか否かとは関係がない。
2.潜在敵国の文化や歴史についての知識はきわめて重要である。
3.相手国への牽制が有効か否かは牽制される側の心理に依存する。
4.戦術よりも戦略が重要である。
5.経済制裁は実際の戦争行為に匹敵しうる。
6.道徳的あるいは精神的に相手より優れているとの思い込みは、敵の物理的優位性を過小評価させる。
7.戦争が不可避であると考えると、自らその予言を実行してしまいがちになる。
サイバー空間は戦争状態だと言われていますが、それらを語るときに出てくるのが『超限戦 21世紀の 新しい戦争』です。
面川はまだ読んでいませんが、聞くところによると、戦争は、社会を不安定にすること、信用性を傷つけることなど、多角的に行われていて、それが、フェイクニュースが蔓延する原因でもあるというのです。
ジェフリー・レコード氏が導き出した結論は、まさに『超限戦 21世紀の 新しい戦争』を思わせるものです。
著者は、最後に、経済制裁を発動することは、軽々しく決めるべきではないと、アメリカ政府に対して苦言を呈しているのです。
アメリカに経済的に隷属することを要求された日本
太平洋戦争後、実態的には、アメリカに経済的に隷属したわけですが、戦争以前にも、そのような要求がアメリカから届いていました。日本は、戦前には、アメリカからの石油に頼っていたわけですが、輸出を止めると言われて、様々な要求を突きつけられました。
石油禁輸は、戦争か、それとも大国の座から降りてアメリカに隷属するか、の二者択一を求めるものでした。
これは、現在でもありうる二者択一です。
日本は、ほとんど資源を有しない国土であるため、海外からの輸入によって経済が回っています。
輸入先の国とは仲良くしなければなりませんし、その国とは違う第3国であっても、グローバルなパワーバランスのなかで、うまく立ち回らなければ、どんな圧力が加わるのか、わかりません。
直近のことでは、イランとの関係があります。
アメリカはイランに対して経済制裁を行い、イランからの石油輸入を禁じています。
日本は歴史的な側面から、猶予されていますが、これも引き延ばせなくなりそうな勢いです。
1941年の日本と同じような立場に追い込まれている国は、北朝鮮やイランなど、現代でも少なくないのです。
日本は挑発された
日本は、石油禁輸により、戦争という選択肢を選ぶしかなくなった、というのが著者の考えです。むしろ、ルーズベルト政権は、明確に「戦争になる」というカードを切らずに、石油禁輸という挑発を行った、と断じています。
「他の軍事大国に対して、こちらに戦争を仕掛けさせるような外交政策をとってはならない。万一そうした政策をとるのであれば、軍事衝突を覚悟した上で実行しなければならない」
「そうした政策の結果、相手国が戦争を決意すれば、われわれに最大のダメージを与える時と場所を選べることを覚悟しておかなければならない」
著者は、日本の真珠湾攻撃について、「何も挑発していない」なかで行われたと主張するルーズベルト大統領に疑いをもっています。
イランも、いま、アメリカに挑発されているのかもしれません。
軍事の専門家は、「イランへのアメリカ(またはイスラエル)による攻撃は負の効果を生み、その結果、イランの現政権の政治力を強めることになる可能性が高い。近視眼的な見地による軍事攻撃によって得られる効果を相殺して余りあるほどのリスクが想定されるのである」と書いています。
国同士に限らず、相手を挑発し、追い詰める行為は、厳につつしむべきことなのです。
「窮鼠猫を噛む」のですから。
<関連の投稿>
【深田萌絵】「日本のIT産業が中国に盗まれている」
【一田和樹】「フェイクニュース」
コメント
コメントを投稿