【一田和樹】「フェイクニュース」

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」読了。

著者の一田和樹さんはサイバーミステリを書く小説家ですが、世に出ているフェイクニュース本は、世論操作にまで踏み込んで書かれていないため、仕方なくこの本を書いたと心情を吐露しています。

そんな視点から、各国でフェイクニュースが世論操作に使われ、国家を分断する戦争兵器として利用されていることを、多数の事例をもとに明らかにしているのが、本書です。

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)

一田和樹 KADOKAWA 2018-11-10
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by ヨメレバ

ちなみに、わたしは、大学で広告について教えています。

数年前から、ネット広告に潜む、ボットによる広告費の不正について取り上げていますが、次回の講義からは、フェイクニュースも真剣に取り上げなければならないと感じました。

世論操作とは、マーケティングの一種ですから。





日本でも行われている世論操作

心ある方は、なんとなく感じていると思いますが、安倍政権になって野党の弱体化が激しいと感じませんか?

本書の第5章「日本におけるネット世論操作のエコシステム」には、次のようなことが書かれています。

  • 日本には、ネット世論操作が狙う4つの脆弱性(移民や少数民族、周辺国との緊張関係、内部分裂、ゴシップや陰謀論に人気がありメディア倫理が弱い)がある
  • 日本国内には多数のボット、サイボーグが存在し、現政権支持、嫌韓、嫌中、政府批判者への攻撃に使われている
  • 日本の報道には偏りがあり、海外ニュースを報道しない、報道しても正しくないことが多い
  • 日本人特有の意識構造(忖度、扇動されやすい)
  • 差別意識に鈍感

フェイクニュース天国になりかねない(すでになっているのかもしれませんが)日本では、フェイクニュースかどうかをチェックするまともな機関も、法律もないため、野放し状態だというのです。



右よりアカウントの8割がボットやサイボーグ

著者の一田和樹さんは、ここまでやりたくなかった、と書いておられますが、本書のために独自に調査を行っています。

Mentionmapp社(https://mentionmapp.com/)の協力を得て、日本の政権党、過激な右よりアカウントのフォロワーを分析しています。

活動的なアカウント9つを選び出し、これらのアカウントと関連が深い4979のフォロワーを抽出し、この中から活動的な157アカウントを詳細に調べたというのです。

その結果、47.2%がボット、32.9%がサイボーグで、全体の8割以上が、なんらかのプログラムによるものと判明したのです。

昔から、声の大きい人の意見が通る、とは言われれていますが、SNSが世論を左右するネット社会では、嘘でも、たくさんのリツイートや「いいね」がつけば、誰もが信じる事実になるというわけです。



ファクトチェックやAIによる自動判別は決め手にならない

しかも、そのニュースがフェイクニュースかどうか、事実確認を行うには時間も人手もお金もかかり、いったん流れてしまうと、まるで事実であるかのように伝播していきます。

わたしたちの記憶に新しいものとして、2018年9月、関西地区を襲った台風21号をきっかけにフェイクニュースが流され、ある人物が自殺に追い込まれました。

そのフェイクニュースは、中国発信のもので、台湾政府を叩くことが目的のようです。

それによると、台風21号のために、関西空港に多くの乗客が足止めされていましたが、中国大使館は15台のバスをだして中国人を救出したのに、台湾政府はなにもやっていない、という内容です。

台風21号のために封鎖されてしまった関空の様子は、ニュースで繰り返し報道されていましたから、ご存じの方も多いと思いますが、バスが関空に行けるような状況ではありません。

なにしろ、大阪湾でタンカーが関西国際空港連絡橋に衝突し、関空は閉鎖に追い込まれたのですから。

しかし、日本語を理解できない人々には、そんなことはわかりません。

大阪にある台湾事務所の蘇啓誠という方が、台湾国内で起こった非難に耐えかね、自殺してしまいました。

AIをつかった自動判別の場合には、フェイクニュースがすり抜けてしまうということも起こっていて、事後に行うファクトチェックはもちろんのこと、投稿時の自動判別でさえ、100%役に立つわけではないというところに、フェイクニュースの兵器としての恐ろしさがあります。


真実であるかどうかより、多くの人が知っているコトが真実になる

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」を読んでいて、いろいろなことを思い出しました。

たとえば、東西冷戦を終わらせたのは西側の衛星放送だった、とか。

日本では、戦前の2・26事件で、ラジオ局が反乱軍に制圧されそうになった、とか。

今でも、テレビ局などのマスメディアには外資参入の上限がある、とか。

テレビや新聞といったマスメディア時代でも、そのニュースが本当かどうかは怪しいものがありましたが、マスメディアは国民世論を操作できるので、まっさきに狙われるというのが戦争における常識です。

ネット社会になって、マスメディアほどにはお金もかからず、やりたい放題になっている、というのがフェイクニュースの実態のようです。

本書を読んで感じたことの中には、ロシアと日本の関係改善の話題があります。

ロシアは、フェイクニュースを世界中で実行している可能性が高いと著者は指摘していますが、最近のニュースを見ていると、ロシア製のボットやトロール、サイボーグが大活躍している可能性を否定できません。

たぶん、安倍政権も容認しているのでしょう。

北方領土のことが解決、または前進すれば、安倍首相もプーチン大統領も、どちらも歴史に名前を刻むことができますしね。


ニュースを疑う、文章をきちんと読んで理解することが大事

著者によれば、日本はフェイクニュース大国へと成長しているようです。

そんな日本に暮らす日本人の私たちは、何を信じれば良いのでしょうか?

これは、わたし個人の意見ではありますが、まずニュースはNHK BS1の世界のニュースを見ることをおすすめします。

海外ビジネスに手を染めていた頃には、毎朝、各国のニュースを見ていました。

日本では流れないニュースが流れます。

そして、日本では語られないことが、多く語られています。

海外に行ったら、日本語の番組ではなく、現地のテレビ局をつけます。

英語放送は必ずあるので、それを見るようにすると、日本とはニュアンスの違うニュースの存在を知ることになります。

しかし、それらのニュースですら、フェイクの可能性があるのです。

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」を読むと、ネットの前では、人間は無力な存在だと感じてしまいます。

わたしたちにできることは、せいぜい、ニュースを疑う、内容をよく読むことくらいなのかもしれません。


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