【浅倉秋成】『俺ではない炎上』

俺ではない炎上』読了。

六人の嘘つきな大学生』の作者が手掛けるSNS炎上ミステリーです。

これを読む直前に、中山七里さんの『棘の家』を読んでいますが、『俺ではない炎上』のほうがおもしろかったと思います。




先制攻撃有利

SNSに限りませんが、サイバー攻撃は先制攻撃有利が原則です。

一方的にターゲットにされた被害者は、だれがどんな思惑で攻撃してくるのか、知りようがありません。

本書では、住宅メーカーに勤務する男が、殺人犯であるかのように偽装されてしまいます。

そして、ニュースになる前から、ネット民は拡散されたツイートをもとに盛り上がります。

この辺は、最近では日常的に見られることでもあり、想像しやすいと思います。



自分に厳しく

主人公の男は、スクールカーストでは上位に位置し、うまく出世してきたと自負するのですが、実は自分に厳しい分、他人にも厳しいという厳格なタイプ。

清廉潔白な人柄ではありますが、一方で憎まれることも多いのに、自分では無自覚です。

ところが、この性格ゆえに、主人公が無実であることを信じる人間も後半には登場してきます。

言葉遣いに正確さを求める主人公は、こんな文章をツイートしない、と言い切るのです。

決して好きではなかった相手から、初めて自分が聞きたい言葉をもらって、主人公は涙します。

それだけ、主人公は追い込まれてしまっていた、ともいえます。



トリックは時間軸

陥れられた主人公は、SNSはやらないタイプ。

なのに10年前にTwitterアカウントが作られていて、身分証明にマイナンバーカード、ツイートはいつも自宅のWi-Fi環境でだけ。

これだけをみれば、まちがいなく家族の誰かが真犯人だと思います。

結末には家族が関係してくるのですが、意外な犯人が登場します。

ラスト近くまで、こういうことだったのか、とわからせてくれません。

一気読みをおすすめします。


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