『棘の家』読了。
中山七里さんの作品は、『カインの傲慢』以来です。
一気読みしてしまいましたが、全体的に軽いタッチのように感じました。
扱っているテーマは重たいんですが・・・。
中学教師の娘がいじめにあって自殺未遂
『棘の家』の設定のキモは、主人公が事なかれ主義にみえる中学教師だということでしょう。
冒頭に、自身が受け持つクラスでのいじめの相談を受けるのですが、話をうやむやにしてしまいます。
家庭内でも、帰りが遅いために、子どもたちとの会話はなく、父親としての実感が薄いことが表現されています。
そんな主人公の小学生の娘が、いじめにあって自殺します。
未遂に終わりましたが、主人公は、娘の変化にまったく気づいていなかった自分に愕然とします。
教師 VS.父親
物語は、主人公が、いじめ被害者の親であるにもかかわらず、教師という職業からも離れられない葛藤が描かれていきます。
父親として、加害児童へ制裁を加えたいと考えている一方、そんなことをしたら、娘が学校に戻れなくなる、と考えてしまいます。
しかし、母親は怒りに燃え、加害児童の家に押しかけ、警察の厄介になります。
父親の自分と乖離していく母親、そして息子とのへだたりを感じる主人公は、しかし、テレビ局の人間と出会うことで、母親がリードする制裁の道を選択します。
人を呪わば穴二つ
テレビのニュースとして、娘の自殺未遂報道がされると、加害児童がいとも簡単に特定され、ネットで盛り上がります。
その様子をみても、主人公の胸が晴れるわけではありません。
そして、加害児童が殺されてしまうという事件が発生。
容疑者は、加害児童を恨んでいる主人公一家。
アリバイのない息子が警察の事情聴取を受けることになり、被害者家族から一転、今度は殺人犯の家族になってしまいます。
家族の隠れた一面を知ることに
そして主人公は、家族一人一人の隠された一面を知っていくことになります。
穏やかな家族に戻れるのか、戻れないだろう、と考えながらも、教師としてより父親であることを選びます。
そして、家族をまもるために、一歩踏み出すのですが・・・。
意外な犯人
「どんでんがえし」が中山七里作品の持ち味といわれますが、『棘の家』でも意外な犯人がラストで判明します。
といっても、これってありかな?という印象が若干残ります。
ミステリーではありますが、スマホを起点とした人間関係が構築されている今、家族と言えど、お互いに何も知らないという前提を忘れてはいけないという作品なのかも。
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