【瀧本哲史】「ミライの授業」

先日、瀧本哲史さんが亡くなられたというニュースが流れ、手にしたのが「ミライの授業」です。

なかなか読めずに積んでありましたが、読了。

14歳に向けて語るという形式ではありますが、わかりやすく、示唆に富んだ内容は、大人こそ、一読すべきだと感じました。





ミライは自分でつくる

14歳向け、という形なので、若者に対するメッセージとなっていますが、瀧本哲史さんが本当に言いたかったのは、「自分を変えること」ではないでしょうか。

それを説明するために、フランシス・ベーコンを登場させ、思い込みのワナについて説明しています。
  • 人間という種族、脳の仕組みからくる思い込み
  • 多様的な考え方を無視した個人の思い込み
  • 噂や報道などから知った情報による思い込み
  • 権威者の発言を無批判に信用する思い込み

これらは、若者だけでなく、誰しもが陥るワナです。

思い込みや業界慣習などに囚われていては、自分でミライをつくることはできない。

つまり、自分を変えることが大切、というメッセージだと思います。


なぜミライを自分でつくるのか?

21世紀は、課題発見の時代だと著者は言います。

仕事は誰にでもできる時代になり、同じ仕事なら、より安い人に仕事が回っていく。

最終的には、24時間、文句を言わずに働くロボットが、人間から仕事を奪っていく時代。

人間は、与えられた課題を解決するだけでは、行き場がなくなる。

だから、自分で課題を発見し、自分でミライをつくるべきだというのです。

そのときに、必要な視点、行動原理を紹介しているのが、『ミライの授業』なのです。


大人が応援するのは「世界を変えない若者」

本書のなかで、科学史家のトーマス・クーンの『科学革命の構造』を引き合いに出し、パラダイム・シフトは、世代交代でしか起こらない、と説明しています。


パラダイムとは、「時代に共有された常識」のことであり、100年前の教科書に書かれていたことはウソだらけ、と著者は言います。

実際、理系の教科書は、100年前とはまったく違うことが書かれています。

古い世代、今を知る大人には、世界を変える力はない。

そして、世界を変えるのは、いつだって「新人」である。

トーマス・クーンが発見した、世代交代だけが世の中を変えるという事実は、ただ待っていれば「世界が変わる」ということではありません。

そうではなくて、伝統的なルールに縛られないことによって、新しい発見、つまり課題発見ができるということです。

逆風に向かって進むこと。

それが、課題を発見することであり、ミライを自分でつくることになる、と瀧本哲史さんは主張するのです。

ほんと、これは真理。


「伝える力」の大切さ

本書の中では、個人でできることも書かれていますが、仲間と協力することの大切さも説かれています。

なかでも印象に残ったのは、メンデルの法則で知られる、グレゴール・メンデルの事例です。

彼は、数学で森羅万象を説明しようとして遺伝に取り組んだ人物。

さぞや生前から知名度の高い人物だったのだろう、と思いきや、実は生前はまったく相手にされていなかったのだそうです。

その原因が、人付き合いが苦手であったこと。

数学が得意だったので、遺伝の法則について、言葉ではなく数式で説明したばかりでなく、正しければ認められるハズ、と思って人生を終えてしまいました。

人と話すこと、できそうな人に協力を求めることができないと、どんなに素晴らしいアイデアであっても、誰も聞いてくれない、無視されるとうことです。

特に、SNS時代にあって、「伝える力」の重要性は増してきていると思います。


瀧本哲史さんがおすすめする本

ミライの授業」の最後に、14歳の読者むけと断っていますが、おすすめの本が書かれていましたので、こちらで紹介しておこうと思います。

これらのラインナップをみるだけで、瀧本哲史さんが、どんなことに興味を持っていたのかがわかるのではないでしょうか。

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)


予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)


勉強革命!「音読」と「なぜ」と「納得」が勉強力とビジネス力をアップさせる



統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)



入門 医療政策 - 誰が決めるか、何を目指すのか (中公新書) 



フランクリン自伝 (岩波文庫)



福翁自伝 (講談社学術文庫)



リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)



「大発見」の思考法 iPS細胞 vs. 素粒子 (文春新書) 



ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則



1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)



民法改正 ――契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書) 



マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)



武器としての交渉思考 (星海社新書) 



ハリー・ポッターと賢者の石 グリフィンドール(20周年記念版)



巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ



ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか



イーロン・マスク 未来を創る男



君たちはどう生きるか (岩波文庫)




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