【不二 龍彦】 生前退位問題も詳しくわかる「歴代天皇大全」





歴代天皇大全」読了。

先日読み終わった「空海の秘密」には、桓武天皇とか嵯峨天皇とかが登場します。

歴史は好きですが、よく考えたら天皇ひとりひとりについては、くわしく知らないな、と思いまして、購入しました。

御所
おりしも今上天皇の生前退位・譲位のことについて議論されており、国民としてきちんと理解しなくちゃ、と思ってもいました。

歴代天皇大全」には、今上天皇の生前退位・譲位についての解説が、最初にあります。

ふつうの国民感情としては、天皇さんが一線から引退してもいいんじゃない、だと思います。

会社だって家だって、代替わりは当たり前であって、死なないと代替わりできなわけではないからです。

歴代天皇大全」では、どうして簡単に生前退位ができないのか、について歴史的な事情とともに、法的な解釈についても解説されています。

歴代天皇大全

不二 龍彦 学研プラス 2017-01-24
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簡単に生前退位ができない理由

生前退位ができなくなったのは明治に入ってから。

戦後も、次のような理由から生前退位をできなくしてしまいました。
  1. 臣下の脅迫で譲位した前例があり、南北朝時代のような混乱を招いた。
  2. 戦後、明治時代の皇室典範から、生前退位と女性天皇を認めないことを引き継いだ。
  3. 天皇の意志による退位をみとめると、象徴天皇が国民の総意に基づくものである限り、憲法に抵触する可能性がある。
  4. また、天皇の意志による退位を認めるとしたら、天皇にならない自由もセットにして認めなければならない。
天皇制の安定的継続を考えたとき、その根底から揺るがしかねない問題なのです。

しかも、今上天皇一代限りの生前退位としても、引退された天皇の名称や費用の出所など、現行法では決められていないことばかりなのです。

庶民感覚では理解しにくい事情は、さらに象徴天皇の公務とはどこまでを指すのか、にまで踏み込んでいきます。

たとえば、被災地の訪問や戦争犠牲者に対する慰霊の旅(最近もフィリピンを訪問)などは、反対派からは「陛下個人の解釈による象徴天皇の役割」であって、明確には公務ではない、という主張もあるのです。

むずかしいですね~。

そんな天皇とは、歴史上どんな存在であったのかを外観できるのが「歴代天皇大全」なのです。


天皇のお名前知ってますか?

戦前の教育では、歴代天皇の名前を言えるように教育されたそうですが、いまどき125代の天皇すべてを言えるような人は、ある種の特技とみなされます。

大河ドラマや映画などでよく登場する天皇としては、明治天皇、その父である孝明天皇が多いと思います。

ほかには、平清盛や源義経の時代に長期政権をきずいた後白河天皇、建武の新政の後醍醐天皇、さらに時代をさかのぼって平安京遷都の桓武天皇といったところでしょうか。

かつてはお札に印刷されていた、有名な厩度(うまやど)王子こと、聖徳太子は天皇になっていません。

何をやった天皇であるのか、という事績まで知っている天皇となると、10人も名前を言えたら良い方だと思います。

京都御所

武家政権下で経済的に弱体化する天皇家

天皇の力が弱まり、経済的に困窮するのは鎌倉時代からです。

本来は天皇家のものであった財産がどんどん浸食されてしまうためです。

103代後土御門天皇は、葬儀費用がないという理由で、ご遺体が死後1カ月も御所に放置されていたというではないですか。

その後も朝廷儀式は、経済的理由から途絶えていきます。

そして、儀式を行うために、官位を売ったり、守護大名から寄付を募って即位の礼をおこなったりしたのです。

そんな窮乏状態を助けたのが、織田信長と豊臣秀吉なのですが、つづく徳川家康は法律によって天皇からさまざまな権限を奪いさるのでした。

歴代天皇のひとりひとりについて、簡単ですがわかりやすく解説された本書は、時代劇や歴史ドラマを見るときの参考書になります。


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