パトリシア・ハイスミスといえば「太陽がいっぱい」ですが、主役のトム・リプリーという人物の物語には、続編があったことを知りませんでした。
フランスの俳優アラン・ドロンさんが引退を表明したことをきっかけに、NHKがインタビューを申し入れたのですが、そのインタビュー番組を1ヶ月ほど前に見ました。
その後、映画「太陽がいっぱい」を観て、原作を読み返そうと思ってAmazonで検索したら、トム・リプリーものがたくさん!
フランスの俳優アラン・ドロンさんが引退を表明したことをきっかけに、NHKがインタビューを申し入れたのですが、そのインタビュー番組を1ヶ月ほど前に見ました。
※11月6日15時からBSで再放送!
その後、映画「太陽がいっぱい」を観て、原作を読み返そうと思ってAmazonで検索したら、トム・リプリーものがたくさん!
太陽がいっぱい 【特典DVD付2枚組】 | ||||
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なにしろ、「太陽がいっぱい」の原作を読んだのは、大学生のころ。
まさかシリーズものとは知りませんでした。
贋作 (河出文庫) | ||||
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トム・リプリーものの2作目
「贋作」は、「太陽がいっぱい」の続編ともいうべき作品です。映画のほうの「太陽がいっぱい」は、最後にトム・リプリーの罪が暴かれてしまいますが、原作では犯罪はバレずに終わります。
トム・リプリーは、ディッキー・グリーンリーフとその友人フィリップを殺害するのですが、疑惑は疑惑のままで終わり、今では株式投資の収入などで、パリ郊外の邸宅で悠々自適の毎日を過ごす人物となっています。
しかし、犯罪の才能にあふれるトム・リプリーは、副収入として贋作にも手を染めていた、というのが「贋作」なのです。
その気がないのに犯罪の深みに沈むリプリー
「贋作」を読んでいると、トム・リプリーが、最初はその気がなかったことが、よくわかります。たとえば、すでに死んでいる画家の贋作を売るビジネスを提案するなど、罪の意識がありません。
ごく軽い気持ちなのです。
しかし、そのちょっとした提案が大成功し、今では株式投資の収入と同じくらいの利益を生み出すようになっています。
お金は贅沢な生活には不可欠ですから、トム・リプリーはしぶしぶ贋作ビジネスの仲間たちとの関係を続けていました。
そして、贋作ではないか?という疑いをもつ人物が登場することによって、事態は急変します。
3度めの殺人
トム・リプリーは、贋作疑惑をもつアメリカ人ビジネスマンを、自宅のワインセラーで殺してしまいます。このあたりの心理描写がとても巧みで、読んでいて、自分がトム・リプリーになったかのようです。
トム・リプリーが「殺すしかない」と決断するのは、プレゼントしたワインを突き返されたからなのです。
(もちろん、他にも理由があるんですけど、ネタバレになるので書きません)
まるで「異邦人」のような動機ですね。
瞬間的とも言える判断や決断は、トム・リプリーの特徴なのか、それとも犯罪者とはこういうものなのか?
何気ない心理描写に、犯罪者の本音が表現されているかのようです。
よくニュースで「経緯をよく覚えていない」「やる気はなかった」という報道が出てきますが、トム・リプリーも直前まで殺害する気はなかったのです。
そして、当然のことながら警察に疑惑を持たれ、周辺を調べられることになっていきます。
ウソに重ねるウソ
疑惑をかけられても、トム・リプリーは楽観的です。悲観的になるのは、物語の後半に入って、複雑化してくる頃からです。
なんと、贋作画家が突然やってきて、トム・リプリーを殺そうとし、それはほとんど成功しかけます。
この時点でトム・リプリーは、自分を殺そうとする贋作画家(しかも自殺願望あり)と、警察の捜査の2方面の難局に立たされています。
そして、贋作ビジネスからあがる収入のためには、贋作画家には自殺してほしくないのですが、贋作画家は結局のところ、自殺してしまいます。
しかし、ここでウソの天才であるトム・リプリーは、贋作を本物にするための仕掛けをするのです。
これ以上は書けません、読んでください!
一気に読めます。
電話が最高の手段だった時代
「贋作」が書かれた1970年、当時の通信手段は手紙、電報、電話でした。物語のなかでは、何度も電話のシーンが登場します。
しかも、当時は交換手という人たちがいて、電話がつながるまでに何十分も待たなければなりません。
とくに国際電話(ヨーロッパが舞台なので頻繁に登場)なので、国ごとの回線状況が詳しく書かれています。
今なら、メールかチャットか、犯罪の証拠を残さないためには会って密談するのでしょうか。
とにかく、当時の回線状況がわかる電話シーンは、時代を感じさせます。
今と変わらない交通手段
ヨーロッパの交通といえば、列車か飛行機、または車ですが、「贋作」の舞台がロンドンとパリ郊外なので、飛行機がひんぱんに登場します。ロンドンからパリのトム・リプリーの家まで2時間で到着すると書かれているので、おそらく1970年には、そういう状況だったのでしょう。
早いですね。
今でも、ロンドン―パリ間は1時間のフライトですが、セキュリティチェックが厳しくなっているので、空港を出るまでの所要時間が、昔よりかかるようになっているとは思います。
ぜひ、映画「太陽がいっぱい」を観てから、お読みください。
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