【東野圭吾】「沈黙のパレード」

吉方位旅行のお供に「沈黙のパレード」を持っていって、読了。

久しぶりの東野圭吾作品です。

ガリレオものなので、読んでみようか、と手に取りました。

沈黙のパレード

東野 圭吾 文藝春秋 2018-10-11
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by ヨメレバ

キムタク主演で「マスカレード・ホテル 」が映画化されて、東野圭吾作品に注目が集まっていると思いますが、やはりガリレオものは、東野圭吾作品のなかでも秀逸だと思います。

鳴り物いりで発売された「ラプラスの魔女」は、はっきりいって駄作というか、何が書きたかったのか、という問題作でした。

映画もコケてたみたいだし・・・。





まるでオリエント急行殺人事件

沈黙のパレード」は、アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」と同じく、ひとつの殺人事件の犯人がいっぱいいる、というミステリーです。

オリエント急行殺人事件 (字幕版)
by カエレバ

このような、殺人の参加者が多いという場合、殺される対象者がとんでもなく悪いやつでなければなりません。

そして、クロなのに自由な状態にあることが条件です。

沈黙のパレード」で殺されるのは、20年前に少女を誘拐して殺したにもかかわらず、裁判では証拠不十分で無罪となった人物。

その人物に、今度は商店街のアイドル女性を殺した嫌疑がかかりますが、これまた証拠不十分で猶予・釈放されてしまいます。

被害者の両親をはじめ、周囲の人々の憎しみは深く、できることなら殺してやりたいと考えます。

そんな彼らが、少しずつ部分を担当するという殺人計画が実行されるのです。



ガリレオが解明する殺人方法とは?

今回の凶器はガス。

これ以上書くとネタバレになりますが、ガスをつかって窒息死させるのです。

このガスは、テレビドラマ(相棒とか)でも使われているので、けっこう早い段階でピーンと来るのですが、本作は、たんなる謎解きではないミステリー作品になっています。

これは、作家としての腕というしかありません。

設定はオリエント急行で、トリックもおおよそ想像がついているにもかかわらず、どんどん読みたくなるのです。

そして、眠くなったりしないのです。

これはどういうことでしょうか?


ミステリーだけど心理劇

沈黙のパレード」は、探偵役(ガリレオと刑事たち)の動きを描いてもいるのですが、やむにやまれずに殺人という選択をする、ごく普通の人々の心理を丁寧に描き出しています。

被害者の両親、妹、交際していた男性、被害者の才能を見出す者、そして下町っぽい商店街の人々。

それぞれが、被害者への思いを噛み締め、そして殺人計画に協力します。

読んでいて「真夏の方程式」を思い出しました。

真夏の方程式
by カエレバ

真夏の方程式」は、娘の誕生にまつわる秘密が事件の背景となっていました。

こちらは、事故か殺人か、というのがガリレオの解明ポイントでしたが、子どもとの交流を含め、ガリレオが関係者に深く同情しています。

沈黙のパレード」では、ガリレオが、容疑者たちに同情的であることが印象的です。



「容疑者Xの献身」で後悔したガリレオ

東野圭吾作品のなかでも傑作といえる「容疑者Xの献身」では、ガリレオ(湯川博士)は、旧友の犯罪を暴きましたが、「沈黙のパレード」で、このことを後悔していると語ります。

容疑者Xの献身
by カエレバ

犯罪を明らかにすることが、決して人を幸せにするわけではない、という境地にいたっているのかもしれません。

しかし、最後の最後まで、ガリレオは事実を明らかにしようとします。


殺人者が存在しない?

オリエント急行殺人事件」では、エルキュール・ポワロは殺人者たちに同情して、警察に真実を告げませんでした。

しかし「沈黙のパレード」では、事実は事実として解明していくのですが、殺人罪に問われる人物は存在しない、という結果を導き出します。

トリック解明よりも、人々の気持ちを深く描き出したのは、こういう結論に読者が共感することを狙ったものかもしれません。

なるほど~、と感心してしまいました。

トリックを楽しむというよりは、著者である東野圭吾さんの意図を推測しながら読み進めるような内容で、旅のお供にぴったりでした。

いずれドラマ化、映画化されると思います。

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