【阿部智里】『亡霊の烏』

八咫烏シリーズの11作目『亡霊の烏』読了。


1年ぶりの新作、描き下ろしです。

物語は、最終章に向かっているかのような内容でした。

次作が楽しみ!




前作『望月の烏』に続く物語

亡霊の烏』は、前作の『望月の烏』に、時間的にも、登場人物的にも直接つづく物語です。

9作目の『烏の緑羽』が長束の物語、8作目『追憶の烏』では奈月彦(真の金烏)が暗殺されます。

7作目の『楽園の烏』は外界と山内の物語で、安原はじめが登場します。

6作目の『弥栄の烏』は、八咫烏シリーズの設定を解説するような内容で、山上が人間から生まれること、日吉大社、上賀茂神社・下賀茂神社、葵祭との関係の示唆?など、奈月彦の記憶との関係から描き出されます。

5作目の『玉依姫』は、『弥栄の烏』とウラオモテの関係にある物語のようで、やはり設定を解説するような内容です。

4作目の『空棺の烏』は、雪哉(黄烏雪斎)が主人公で、いわゆる学園モノであり、銭湯者です。

しかし、この時代の人間関係が、金烏をとりまく人間関係と重なります。

3作目の『黄金の烏』は、外界と山内の関係を描いていて、「真の金烏がなぜ誕生するのか」を解明する物語でしょうか。

2作目の『烏は主人を選ばない』は、謎の多い”日嗣の御子”奈月彦の物語で、1作目の『烏に単は似合わない』とはウラオモテの関係になります。

アニメでは、同じ時間軸のある1作目と2作目が描かれていると考えられます。


こうしてシリーズを概観してみると、『亡霊の烏』では、7作目以降の物語が、どのように関係しているのか、少し理解できるようになります。

外界と山内の関係、山神、猿、天狗(人間)、そして真の金烏。

そんな展開が、次作では期待できそうです。



金烏代凪彦と黄烏雪斎

亡霊の烏』は、山間と呼ばれる、いわゆる貧民街出身のトビが、黄烏雪斎の実家でもある北家にあずけられるところからはじまります。

澄生こと紫苑の宮は自殺したことになっていますが、長束の庇護のもとにあります。

その紫苑の宮は、金烏代凪彦に大きな影響を与える存在です。

亡霊の烏』は、暗殺された奈月彦の考えを継ぐ紫苑の宮、長束、凪彦と、いまや悪のリーダーであり、体制維持派のトップ・黄烏雪斎との戦いのはじまりのようです。

第一戦は、金烏代凪彦の敗北でおわりますが、一枚岩であるかのようにみえる貴族社会には、実は雪斎に反感を感じるものもいることが、トビの視点から語られていきます。

山内と外界の関係も、あらためて語られており、シリーズのなかで描かれてきた伏線というか、謎をちょっと出ししていたりしています。



安原はじめ再登場?

物語を読み進めると、いよいよ外界と山内が交差するのかな?と感じました。

いまのところ、外界のキーマンとなった安原はじめが、再登場するのか。

それとも、全然ちがう人物が、キーマンとして登場するのか、という期待感が生まれました。

次作、早く読みたいです。


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