【榎田尤利】『永遠の昨日』

永遠の昨日』読了。


ドラマ化されると知って、手に取ってみました。

高校生同士の初恋。

その相手が同性だった、という作品は多いのですが、この作品はオカルトチックでもありながら、かなり重たい初恋物語です。




交通事故で即死、なのに動いてる

高校に入学し、同じクラスになった青海満と山田浩一は、お互いに一番好きという関係です。

登下校も一緒なのですが、ある雪の朝、山田浩一はトラックに跳ねられ即死。

それを認められない青海満の意思が、山田浩一を生きた死体としてしまいます。

もちろん、はじめはそうとは知らない満は、浩一に普通の生活をさせようと、クラスメイトを説き伏せ、学校生活を続けさせるのです。



生きた死体のエネルギー源は?

ここで登場するのがクラスメイトで実家が神社という女子。

浩一は「鬼」だから、祓わなければならないと言いますが、それは満を心配してのこと。

死体が元気なのは、人間からエネルギーを奪っている、つまり食っているからだというのです。

ところが、浩一のエネルギーは、満の気持ち、思念であり、それを受け取って浩一は動く死体となっていたのです。

しかし、クラスメイトのなかでも浩一との接点が少なかった者から、次第に浩一の記憶がなくなっていきます。



初恋、だからこそのエンディング

永遠の昨日』をはじめから3割ほど読んで、「これはBLだから、結ばれると浩一は消える、というパターンに違いない」と確信しておりました。

男子高校生の初恋だからこそ、のエンディングです。

さらに、青海満の母も、死後数日間は実態を持っていたことが父の口から語られる段になると、青海一家だからこそ体験できることなのか!とさえ思います。

浩一が姿を消し、ひとり残された満。

それを見守る父。

そして、浩一目線で語られるエピローグには、浩一から満への愛がつづられています。

で、ここで終わりかと思ったら、2010年に追加されたと思われる約20年後の満とクラスメイトが、浩一の墓参りをするラスト。

このラストで、浩一が自宅の布団のなかで亡くなっていたことが明らかにされています。

ロマンティックなオカルトもどきの恋物語で終わっても十分だとは思いましたが、しっくりとくるラストエピソードが、さらに涙を誘います。



無愛想キャラと明るい人気者キャラの恋

BLに限りませんが、高校生同士の恋愛ものには、無愛想で何考えているかわからないキャラが必要なようです。

無愛想キャラが、恋した相手とともにクラスになじんでいくあたりが、物語的に必要なのかもしれません。

それに、無愛想キャラにはある種の固定ファンもつきやすいと思われます。

また、人気者キャラの裏側には、悲しい過去があって・・・、というのも、割とよくある王道の設定です。

しかし、なぜ人気者キャラなのかを紐解くには、わかりやすいとも言えるのです。

ドラマがどんなふうになるのかわかりませんが、BLに抵抗がない人にはおすすめの一冊です。


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