【加谷珪一】『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』

国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』読了。


タイトルの意外性や、心理学的アプローチも感じられ、おもしろそうな印象をもったのですが、間違いなくオススメの一冊です。




IT化=フラット化に抵抗する日本人

ITを活用促進を進める担当や部署など、少しでもその手のことを経験した人にはよくわかる、日本企業のバカバカしいまでこだわりを、「お辞儀ハンコ」を例に説明しています。

組織を効率的に動かすためにIT化を促進していても、言葉だけで、従来組織の慣習をそのままシステム化するムダにお金を費やす。

わたし自身、そういう現場を何度もみてきたので、「お辞儀ハンコ」にみられるアホらしいまでのこだわりに、とても共感しました。



他人が儲けるのがイヤで自分も損するを選択する日本人

本書のなかで、大阪大学の西條辰義教授による研究が紹介されています。

集団で公共財を作るゲームをおこなうと、日本人は、アメリカ人や中国人と比較して、他人の足を引っ張るけ傾向が強い、という結果になりました。

この手の心理を「スパイト(悪意、意地悪)」といい、日本人に顕著に観られ、さらにこれを繰り返すことで、協力的になり、集団的な制裁となって機能するのだそうです。

ここまで書いて、まるでSNSと同じ、と感じるのは、わたしだけではないでしょう。

そして、これを読んでいて、脳科学者の中野信子さんの著書『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』を思い出しました。

この中で、「日本人の98%は楽観的な判断を下せない」と中野信子さんは結論しています。

これは、不安感を軽減し、幸福感を生み出すホルモンのセロトニンに関係しています。

セロトニントランスポーターという、セロトニンを再取り込みするポンプのような機能がありますが、日本人の98%がセロトニントランスポーターの密度が低いため、セロトニンを活発に使いまわすことができず、失敗を恐れ、不安を感じやすいというのです。

ということは、日本人が底意地が悪いのは、脳科学的にも証明されているってことでは?




前近代的ムラ社会に生きる日本人

日本は近代国家ですが、精神的には前近代的ムラ社会、つまり封建社会であった江戸時代のままである、というのが、『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』における主張のひとつです。

近代社会、資本主義社会にもとめられている倫理観が欠如し、上下関係でしかない人間関係のなかで、上位の人間に異常なまでに忖度する。

そんな忖度社会なので、善悪はそのときの状況「空気」によって左右される、法が絶対的なものとして機能しない社会。

日本人の多く、とくに若者が生きづらく、将来を悲観するのも、そんな空気を敏感に察知しているからでしょう。

日本人のマインドを変えなければ、景気不要しない、という点において、共感はしますが、マインドチェンジがそんなに簡単にできないのではないか。

なぜなら、それは日本人の脳がそうできているから・・・?

と考えてしまいました。

とても勉強になるので、ぜひ手にとって読んでください。


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