【倉数茂】『忘れられたその場所で、』

忘れられたその場所で、』読了。

ネットのレビューを見て、購入しました。

テーマがハンセン病で、その収容施設の関係者が殺される、というミステリーです。




霊感少女が第一発見者

 『忘れられたその場所で、』の興味深い点は、霊感少女が、事件の第一発見者だということです。

霊感少女なので、なぜか、事件のポイントになる場面に登場します。

一方、事件を追う若手刑事には、脳性まひの弟がいて、深い葛藤と鬱屈を抱えています。

おまけに、ハンセン病という、医療政策のなかでは最悪の部類にはいる隔離政策を、199年後半まで続けたという病気が、事件の背景になっています。

そして、登場してくる人物の多くが、健常者ではない家族を持つことで、社会との関わり方や生き方に、問題意識を抱えているのです。

読み応えは十分で、一気読みしたにもかかわらず、静謐な読後感の不思議な作品です。



黒揚羽の夏

読み終わってすぐに、著者の他の作品を探したところ、著者が第1回ピュアフル小説賞「大賞」を受賞したデビュー作の『黒揚羽の夏』、つづく『魔術師たちの秋』にも、霊感少女の滴原美和とその兄の千秋が登場しています。

大きな世界観のなかの一部が、それぞれの作品に描写されているのでは?と思って、さっそく購入しました。

また、岩手県を中心にした東北が舞台となっているのですが、雪の描写で、寒さが伝わっています。

もし映像化されるのであれば、ぜひとも岩手を舞台に描いてほしいものです。


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