『インフルエンス』読了。
ドラマ化される(された?)というので、手にとってみました。
一気読みでした!
ほんとにアッという間に読み終わった感じで、しかも印象に残る作品です。
女3人の友情物語かも
物語は、団地に生まれ育った主人公から、はじまります。
一人は同じ団地に住む仲の良い友だち。
あることをきっかけに、ぎこちない関係となり、縁遠くなりますが、地元の中学では同じクラスになります。
もうひとりは、東京から転向してきた友達で、中学時代をともにするのですが、こちらも、ある事件をきっかけに疎遠になってしまいます。
彼女たち3人の間には、貸し借り関係とも、友情とも言い難い、つながりがあるのでした。
女同士の友情って、結婚しているとか、子どもがいるとか、本人以外の外部要因の影響をかなり受けると思うのですが、もっと深いところでつながっている3人の女の物語です。
3つの殺人
最初の事件は、中学生のとき。
主人公の友梨は、東京からやってきた真帆を助けるために、真帆を襲った男を包丁で刺してしまいます。
警察から連絡があるに違いない、と心配していた友梨は、同じ団地の幼馴染の里子が、殺人犯として逮捕されたと知ります。
里子は、友梨が刺した男にとどめをさし、自分がやったと自供したのです。
このことが、友梨の心の大きな重荷となっていきます。
そして、真帆も、この事件によって、変化していきます。
次の事件は、里子の祖父殺しです。
子どもの頃から、性的虐待を続けてきた祖父の殺人を、里子は友梨に依頼します。
しかも里子は、友梨のアリバイを、真帆に依頼するのです。
そして、友梨が里子のために、祖父を殺そうとでかけたとき、今度は真帆が、友梨のかわりに里子の祖父を殺してしまいます。
3つ目は、20年後、今度は真帆が、友梨に殺人を依頼します。
真帆は、DV夫を殺してほしい、というのです。
友梨は、なんの疑いもなく、指定された場所でその男を殺してしまいます。
さすがに30歳を過ぎた友梨は、真帆の嘘に気づきます。
そして、殺すように言われたのが、里子の夫であり、中学時代ワルだった男だと知るのです。
殺人がつなぐ関係
友梨と里子、真帆の3人には、それぞれに隠された心理があります。
友梨は、里子を助けられなかったことと、殺人者であるという罪悪感。
里子には、友梨との楽しい思い出。
真帆には、自分を必死になって助けてくれた友梨への執着。
とくに、友梨の、他者に期待しない生き方とか、考え方は、都会に住む大人には理解しやすい感情かもしれません。
一緒に青春を謳歌するよりも、同じような罪悪感とか、同じような罪を持つ者同士のほうが、より深いレベルでつながるという物語なのかもしれません。
カーテンを下ろす
真帆は、友梨も里子も守るつもりであり、たぶん、守ることができたのですが、友梨がカーテンを下ろしてしまいます。
里子を守れるのは真帆であり、自分ではないと見切りをつけ、真帆と里子の関与を一切否定して、自分だけが殺人者として罪を償うことを決めるのです。
ここでも友梨は、自分のことよりも、里子と真帆という、心のどこか奥底でつながっている2人を守ろうとします。
愛着心のなさは執着の強さの現れ
『インフルエンス』のなかで、繰り返し語られるのが、他者に対する愛着心の無さです。
深い人間関係を築けない、築こうとしない。
しかし、それは「いつも終わりを考えてしまう、失うことを考えてしまうから」。
不確かなものしかないなかで、いつか失ってしまうことを恐れるために、深い関係を避けてしまうのだ、と。
これは、愛着心が薄いのではなく、実は、執着心が強いせいなのかもしれない、と描かれています。
このような感覚は、わからなくもない、むしろ、積極的に理解できるかも、と感じました。
とくに、ある程度の年齢になってくると、ある程度の距離をとって付き合うほうが普通になってくるのかもしれませんが。
大人の女性に読んでほしい作品です。
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