『ヘルメースの審判』読了。
東日本大震災をきっかけに、電力というビジネスに着目した点では、『ハゲタカ5 シンドローム』に近いのですが、実は東芝について描いた物語であり、フィクションです。
一気読みでした。
東芝という企業
東芝は、日本を代表する総合家電メーカーで、半導体から原発まで手掛けていました。
『ヘルメースの審判』のなかに登場する原発メーカーは、、東芝が実際に買収したアメリカのウェスティングハウスという原発メーカーのことであり、最終的には手放しているのも、『ヘルメースの審判』にあるとおりです。
また、長期にわたる粉飾決算を行っていたことも事実。
『ヘルメースの審判』は、こららの事実をもとにしたフィクションであり、東芝という企業、ひいては日本企業が抱えている問題を描き出しています。
学閥と忖度
企業に限らず、どこにでも学閥というものが存在します。
それが極端な形で運用されると、学閥人事が行われ、その学閥に属し、同じ学閥の上長からの命令に従わないと出世できないということになります。
それが、東芝(ニシハマ)では行われていて、増収増益という目的を遂行するために、担当者が粉飾していたことが描かれています。
つまり、粉飾決算は、出世したい下層の人間による忖度から始まった、というのです。
これを『ヘルメースの審判』では、科挙制度になぞらえて說明しています。
東日本大震災と原発メーカー
『ハゲタカ5 シンドローム』では、東日本大震災によって、日本の電力マーケットが大揺れに揺れ、そこに商機を見出したハゲタカによる買収劇を描いています。
『ヘルメースの審判』でも、同じような展開について描いていて、原発の海外輸出をしたい政治家(安倍晋三前総理と思われる)が登場します。
このあたりは、『ハゲタカ5 シンドローム』と、ほぼ同じ展開なのですが、『ヘルメースの審判』がちがうのは、LNG(液化天然ガス)の輸出ビジネス、そして原発で出た核のゴミの最終処分場をモンゴルにつくるという、ビッグなビジネスについて語られます。
日本国内では新たな建造はないと考えられている原発ですが、企業を守るためなら、何でもやってやる、という人間の思考が描かれています。
ハーバード出身のエリート
この物語の主人公は、ハーバード大学出身のエリートです。
描かれた世界観には、持っている情報網や人間関係など、日本の枠を超えた人物が必要だったからだと思われます。
実際、英語ができるのとできないのでは、さまざまな面で、広がりに差が出てくるのは事実。
英語でネットサーフィンをするのと、日本語でネットサーフィンをする違い、とでも言い換えることができるかもしれません。
東芝の凋落を描いていますが、お金は生み出すものだ、というメッセージが込められているように思いました。
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