「白銀の墟 玄の月」全4巻読了!
久しぶりの『十二国記』シリーズです。
初めて『十二国記』シリーズと出会ったのは20年近く前になるのかしら?
アニメ化が2002年らしいので、その前後に読んでいたことは間違いなく・・・のはず。
アニメ化されたのは、『十二国記』のなかでも慶国のストーリー。
慶国王となった「陽子」の物語です。
これまでに
1「月の影 影の海」上下巻
2「風の海 迷宮の岸」
3「東の海神(わだつみ) 西の滄海」
4「風の万里 黎明の空」上下巻
5「丕緒の鳥 (ひしょのとり) 」
6「図南の翼 (となんのつばさ)」
7「華胥の幽夢 (かしょのゆめ)」
8「黄昏の岸 暁の天」
と続いていて、「白銀の墟 玄の月」全4巻は、「黄昏の岸 暁の天」の続編といったところ。
合わせて『十二国記』シリーズ0になる「魔性の子」を先に読んでから、読んでほしい作品です。
戴国は、本当の王である驍宗が行方不明のまま7年が経過。
戴国の麒麟である泰麒もまた、蝕を起こして消えてしまい、こちらも行方不明。
その間に、偽王である阿選が国王のように振る舞っていましたが、政治に無関心であるために、戴国はどんどん衰え、国民は飢えて死んでいくという状態です。
第1巻では、このような状況を説明しつつ、劉将軍・李斎と泰麒が戴国に戻ってきて、真の王である驍宗を探していることが描かれています。
易姓革命とは、
「白銀の墟 玄の月」では、易姓革命のルールである、同じ姓は2代は続かないことが語られます。
また、天命を伝えるのは麒麟であり、国は、天命によって選ばれた王と、それを補佐する麒麟によって統治されるというのが、『十二国記』のルールなのです。
徳のない王は天命を失いますが、一方で、前王からの禅譲はもちろんですが、徳のない王には武力による王位簒奪を行なっても良いことになっています。
しかし、白雉が落ちていないので、王が死んではいないことは確か。
では、どこに?
「白銀の墟 玄の月」の物語の大半が、驍宗さがしです。
李斎と泰麒は、その過程で、道教の道士、土匪や反民など、阿選よりも驍宗を選択したいと考える勢力の助力を得ていきます。
しかし、泰麒は李斎のもとから出奔し、ひとり阿選のもとへ乗り込み、「阿選に天命が下った」と主張し、泰麒として戴国の人々を助けようとするのですが・・・。
そして、驍宗は自力で脱出し、李斎らの反阿選勢力といったんは合流するのですが、あまりに多くの犠牲が出て、驍宗は阿選のもとに投降するのでした。
李斎らは、当然のごとくに驍宗奪還を図りますが、戦いは一方的なものに終止し、李斎らは仲間の多くを失ってしまいます。
龍に似ていますが、角をもち、牛の尾と馬の蹄を持っていると考えられています。
『十二国記』のなかでは、麒麟は通常は人間の身体を持っていますが、ときに麒麟に形を変えます。
1000年生きる麒麟は、非常に穏やかで優しく、足元の虫や植物を踏むことさえ恐れるほど殺生を嫌うとされています。
また、麒麟には、黄色のほかに青、赤、白、黒の麒麟がいて、「白銀の墟 玄の月」に登場する戴国の麒麟は黒麒です。
一般的な麒麟は黄色であり、金色の髪を持っているのですが、黒麒の見た目は、すぐには麒麟とわからないほどなのです。
もともと泰麒は、蓬莱の生まれ。
自分の生まれた家族のもとに戻ったことになるのですが、泰麒としての記憶はなくし、人間として成長していきます。
そのことが、泰麒をただの麒麟にしておきません。
泰麒は、驍宗を奪還するために、さまざまな奸計をめぐらし、そして・・・。
泰麒のおかげで、驍宗は群衆が注目する中、奪還されます。
しかし、その奪還劇は、麒麟にとって最も苦痛である殺生を伴うものでした。
そして、天命を伝える麒麟の存在そのものについても。
泰麒は、それらの議論や、各人の言動のなかから、登場人物を判断していきます。
王の不在、または天命を得られない偽王は、国を荒廃させ、衰亡させることは、『十二国記』シリーズのなかで描かれる世界観なので、天命について語ることは当然といえば当然のこと。
そのなかで、そもそも蓬莱生まれの王、麒麟たちが、それぞれの疑問を議論する形で、世界観が読者にも伝わるようになっています。
そして泰麒のように、驍宗を助け出すためには、麒麟としての本性を裏切ることもあるのだ、ということが「白銀の墟 玄の月」で描きたかったことのように思います。
そのためには、どれだけ国が荒れているのか、貧しいのか、そして多くの犠牲者がでてしまうことを描かれなければなかった。
自分の身を挺して相手(パートナー)を護る。
それには深い信頼関係が必要です。
そんな印象を持ちました。
「白銀の墟 玄の月」を読み終、さっそく「魔性の子」と「黄昏の岸 暁の天」を書い直しました。
記憶を取り戻さねば!
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【阿部 智里】「玉依姫 八咫烏シリーズ5」
【上橋 菜穂子】 「天と地の守り人」 ①ロタ王国編 ②カンバル王国編 ③新ヨゴ皇国編
【夢枕 獏】「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」巻ノ一~四
久しぶりの『十二国記』シリーズです。
初めて『十二国記』シリーズと出会ったのは20年近く前になるのかしら?
アニメ化が2002年らしいので、その前後に読んでいたことは間違いなく・・・のはず。
アニメ化されたのは、『十二国記』のなかでも慶国のストーリー。
慶国王となった「陽子」の物語です。
これまでに
1「月の影 影の海」上下巻
2「風の海 迷宮の岸」
3「東の海神(わだつみ) 西の滄海」
4「風の万里 黎明の空」上下巻
5「丕緒の鳥 (ひしょのとり) 」
6「図南の翼 (となんのつばさ)」
7「華胥の幽夢 (かしょのゆめ)」
8「黄昏の岸 暁の天」
と続いていて、「白銀の墟 玄の月」全4巻は、「黄昏の岸 暁の天」の続編といったところ。
合わせて『十二国記』シリーズ0になる「魔性の子」を先に読んでから、読んでほしい作品です。
舞台は戴国
シリーズの中でも、謎が多い国のひとつだった戴国が、「白銀の墟 玄の月」の舞台です。戴国は、本当の王である驍宗が行方不明のまま7年が経過。
戴国の麒麟である泰麒もまた、蝕を起こして消えてしまい、こちらも行方不明。
その間に、偽王である阿選が国王のように振る舞っていましたが、政治に無関心であるために、戴国はどんどん衰え、国民は飢えて死んでいくという状態です。
第1巻では、このような状況を説明しつつ、劉将軍・李斎と泰麒が戴国に戻ってきて、真の王である驍宗を探していることが描かれています。
王は天命によって選ばれる易姓革命
『十二国記』シリーズでは、中国古代に生まれた易姓革命が、物語を語るうえで欠かせない要素(ルール)になっています。易姓革命とは、
天子は天命によってその地位を与えられて天下を治めるが,もし天命にそむくならば,天はその地位を奪い,他姓の有徳者を天子とするという思想のこと。
「白銀の墟 玄の月」では、易姓革命のルールである、同じ姓は2代は続かないことが語られます。
また、天命を伝えるのは麒麟であり、国は、天命によって選ばれた王と、それを補佐する麒麟によって統治されるというのが、『十二国記』のルールなのです。
徳のない王は天命を失いますが、一方で、前王からの禅譲はもちろんですが、徳のない王には武力による王位簒奪を行なっても良いことになっています。
李斎らの驍宗奪還は失敗に
第1巻から第3巻の前半くらいまで、驍宗の行方はわかりません。しかし、白雉が落ちていないので、王が死んではいないことは確か。
では、どこに?
「白銀の墟 玄の月」の物語の大半が、驍宗さがしです。
李斎と泰麒は、その過程で、道教の道士、土匪や反民など、阿選よりも驍宗を選択したいと考える勢力の助力を得ていきます。
しかし、泰麒は李斎のもとから出奔し、ひとり阿選のもとへ乗り込み、「阿選に天命が下った」と主張し、泰麒として戴国の人々を助けようとするのですが・・・。
そして、驍宗は自力で脱出し、李斎らの反阿選勢力といったんは合流するのですが、あまりに多くの犠牲が出て、驍宗は阿選のもとに投降するのでした。
李斎らは、当然のごとくに驍宗奪還を図りますが、戦いは一方的なものに終止し、李斎らは仲間の多くを失ってしまいます。
麒麟は嘘をつかず血を嫌う
麒麟は伝説上の霊獣です。龍に似ていますが、角をもち、牛の尾と馬の蹄を持っていると考えられています。
『十二国記』のなかでは、麒麟は通常は人間の身体を持っていますが、ときに麒麟に形を変えます。
1000年生きる麒麟は、非常に穏やかで優しく、足元の虫や植物を踏むことさえ恐れるほど殺生を嫌うとされています。
また、麒麟には、黄色のほかに青、赤、白、黒の麒麟がいて、「白銀の墟 玄の月」に登場する戴国の麒麟は黒麒です。
一般的な麒麟は黄色であり、金色の髪を持っているのですが、黒麒の見た目は、すぐには麒麟とわからないほどなのです。
泰麒の奸計
「白銀の墟 玄の月」では、幼く純粋だった泰麒が、鳴蝕を起こして蓬莱(現代の日本)に飛ばされてしまいます。もともと泰麒は、蓬莱の生まれ。
自分の生まれた家族のもとに戻ったことになるのですが、泰麒としての記憶はなくし、人間として成長していきます。
そのことが、泰麒をただの麒麟にしておきません。
泰麒は、驍宗を奪還するために、さまざまな奸計をめぐらし、そして・・・。
泰麒のおかげで、驍宗は群衆が注目する中、奪還されます。
しかし、その奪還劇は、麒麟にとって最も苦痛である殺生を伴うものでした。
天命とは何か?
「白銀の墟 玄の月」では何度も、天命とは何か?天命のルールとは?が問われます。そして、天命を伝える麒麟の存在そのものについても。
泰麒は、それらの議論や、各人の言動のなかから、登場人物を判断していきます。
王の不在、または天命を得られない偽王は、国を荒廃させ、衰亡させることは、『十二国記』シリーズのなかで描かれる世界観なので、天命について語ることは当然といえば当然のこと。
そのなかで、そもそも蓬莱生まれの王、麒麟たちが、それぞれの疑問を議論する形で、世界観が読者にも伝わるようになっています。
そして泰麒のように、驍宗を助け出すためには、麒麟としての本性を裏切ることもあるのだ、ということが「白銀の墟 玄の月」で描きたかったことのように思います。
そのためには、どれだけ国が荒れているのか、貧しいのか、そして多くの犠牲者がでてしまうことを描かれなければなかった。
自分の身を挺して相手(パートナー)を護る。
それには深い信頼関係が必要です。
そんな印象を持ちました。
「白銀の墟 玄の月」を読み終、さっそく「魔性の子」と「黄昏の岸 暁の天」を書い直しました。
記憶を取り戻さねば!
<関連の投稿>
【阿部 智里】「玉依姫 八咫烏シリーズ5」
【上橋 菜穂子】 「天と地の守り人」 ①ロタ王国編 ②カンバル王国編 ③新ヨゴ皇国編
【夢枕 獏】「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」巻ノ一~四
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