【水谷竹秀】『ルポ 国際ロマンス詐欺』

ルポ 国際ロマンス詐欺』読了。


SNSを通じて、あたかも恋愛関係になったかのような言葉で相手を騙す詐欺のことです。

高明な漫画家の井出智香恵さんも、国際ロマンス詐欺にあったという番組を観たことがあり、興味がありました。

書店の店頭で見かけて、即買いしました。

本書は、国際ロマンス詐欺の被害者と詐欺師たち、双方を追いかけたルポルタージュです。




借金をしてまで送金

国際ロマンス詐欺は、ネット上の結婚詐欺のようなもののようです。

リアルな結婚詐欺と違うのは、相手と一度も会ったことがなく、最悪の場合は、写真でしか相手を確認できていないことです。

一度も会ったことがない相手に心惹かれるなんて、と違和感を持つ人も多いと思いますが、騙された人たちは、相手が自分や家族を親身に思っていると感じてしまうようです。

しかし、騙す側には騙すためのマニュアルが存在していて、いつ、どんな言葉をかければ良いのか文例がいくつもあるようです。



言葉による洗脳

知り合うきっかけはFacebookが多いようです。

騙す方は、ある種のグループや団体に属している人たちに総当たりで友達申請し、相手が申請を許可すると、すぐにLINEへと移行します。

これはFacebookに詐欺行為がバレると、アカウントが削除されるためだそうで、もっと親密なやりとりがしたいがためではありません。

そして、朝から晩まで、疑似恋愛トークを展開し、お金を払うように洗脳していくのです。



情弱が狙われる

騙す側は、騙しやすい相手を選んでいます。

いきなり親密な言葉をかけられても、嬉しく感じるネットユーザーが狙われます。

いわゆる情弱な、高齢者がターゲットにされやすいようです。

お金の振込先が個人名でも疑わない、投資先の評判を検索しないような人たちです。

そして、なんとなく寂しい環境であったり、寂しい家族関係であったりすると、さらにのめり込んでしまうようです。



西アフリカのヤフーボーイ

国際ロマンス詐欺にも歴史があり、ヤフーメールではじまったようです。

本拠地は西アフリカ。

本書ではナイジェリアに取材していますが、ガーナなどの周辺国まで広がっているようです。

詐欺師たちはヤフーボーイという言葉で知られているのですが、必ずしも組織で動いているわけではないようです。

生活費を稼ぐために、ヤフーボーイをしている大学生が多く、送金させる額も多くありません。

数万円程度というレベルです。

では、数百万以上の送金は誰が受け取っているのでしょうか?

本書でも、プロと思われるヤフーボーイに最後には取材していますが、彼らは組織犯罪者のようです。


本書を読むまで、国際ロマンス詐欺にひっかかる人がいるなんて・・・、と思っていました。

しかし、あまりに巧妙なマニュアルが存在するという事実を知り、騙されてしまう人たちの気持ちも少しはわかったように思います。


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