第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞した作品です。
SFというよりも、AIをテーマにした近未来アクションエンターテインメントといった趣で、久しぶりに「映画化したらおもしろそう」と思った作品です。
気軽に読めるAIのあれこれ
小説なので、AIに関する情報がすべて正しいかどうかまではわかりませんが、基本的には間違っていないように感じさせてくれます。
AIを学習させるためにはラベルをつけるとか、そのラベルの付け方とか範囲とかで、学習が変わってくるとか、ちょっとAIをかじったくらいでも十分に楽しめる内容です。
たぶん、作者は研究者なのか、はたまた技術者なのか、どちらかといえば技術者っぽいと感じました。
だからといって小難しいわけではありません。
むしろ楽しいと感じさせてくれる最大の要因は、登場するキャラクターにあると思われます。
映画オタクで、自分が主役となる映画を作りたい五嶋と、その五嶋に拾われた「自称」三流技術者の三ノ瀬のコンビが、とにかく良いのです。
三ノ瀬はAI技術者、五嶋は回線などに詳しい技術者あがりの悪党であり、ふたりの知識をあわせると大金をゲットできるという内容です。
圧巻の現金強盗
第1章から、ワクワクの展開がはじまります。
映画オタクを登場させるくらいなので、作者も映画オタクなのかもしれませんが、とにかく映像的な描写が続きます。
文章を読んでいるのに、頭のなかですぐに映像化されている感覚。
これって、エンタメ小説には必須の条件だと思います。
どんどん読み進めることができることによって、作品にスピード感が加わるような感じです。
無人運転の軍用車をAIでジャックし、逃げおおせるというのが第1章であり、とにかくおもしろいのです。
ドローンも登場して、絶体絶命かと思わせておいて、ドローンを人力ではたき落とすなんて展開は、技術の素人では思いつかず、そして描けないと思います。
続編はありそうで・・・
三ノ瀬が技術者に復活して、犯罪者から一般人へと戻ったラストでは、五嶋からのSOSが届きます。
そして、はじまりが五嶋が話す現金強盗プランに、三ノ瀬が技術的な弱点について口を出してしまったことから、三ノ瀬が犯罪に巻き込まれることとなった展開が、ふたたび巡ってくるのです。
シリーズ化を狙っているとしか思えないのですが、続編を書くとしたら、どんな内容になるのでしょうか?
無人運転の軍用車はボコったし、監視が厳しいカジノからも現金を盗み出したし、さて次は?
五嶋も三ノ瀬も魅力があるので、コンビとして活躍する続編も読んでみたいところです。
映像化するなら脚本は古沢良太さんで
基本的に明るくて、コメディタッチなので、映像化するなら古沢良太さんに脚本を書いてほしいものです。
アニメ『GREAT PRETENDER』が、雰囲気的には似ていると思います。
実写も良いですね。
Netflixあたりが作ってくれないかしら。
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