【澤村伊智】『邪教の子』

邪教の子』読了。


映画『来る』を観て、原作者の澤村伊智さんの作品を読んでみたくなって、『邪教の子』を手に取りました。

一気読みできる作品です。

そして、映画向きかも、と思いました。




カルト宗教?

邪教の子』は、前半と後半の2部構成になっているような作品です。

前半は、「大地の民」と呼ばれる宗教団体のメンバーに配布された冊子となっていて、「大地の民」の力を描いています。

ただし、登場人物は子どもであり、30年ほど前の物語です。

ニュータウンと呼ばれる住宅街にやってきた、過激な新興宗教を信仰する家族には、11歳の女の子がいて、車椅子生活を送っています。

その女の子と同じ年齢の、ニュータウンで暮らす「大地の民」の子どもたちが、女の子を脱会させ、救出することが描き出されています。

後半は、その冊子を手にしたテレビディレクターの物語です。

その男は、かつて「大地の民」に母親を奪われ、荒んだ生活を送ってきました。

そんな男を救い出してくれたたった一人の友人も、「大地の民」によって失ってしまいます。

「大地の民」は、人間を破壊するカルトだと信じて疑わない男は、脱会者を取材しながら、その気持を強めていきます。



登戸研究所

全体の7割ぐらいまでは、新興宗教とニュータウンの話なのか、と思って読んでいたら、突如あやしい展開となります。

男を導いてきた、脱会者という男が、ニュータウンで自殺に見せかけて殺害されるのです。

男は、表面的な取材だけではだめだと思い、ついに「大地の民」の秘密を探り始めます。

すると、そこには731部隊で知られる登戸研究所が登場します。

「大地の民」の秘密の力でもある「大地の力」は、登戸研究所が研究していたボツリヌス菌であり、化学兵器だったのです。

そして、ボツリヌス菌で殺人を行った「大地の民」は、さらに過激なテロを実行しようとしている。

それを阻止するためには、ニュータウンに住む「大地の民」全員をマスタードガスで殺害するしかない、と男は説得されます。

そして、男はついに実行するのです・・・。



『邪教の子』ではなかった?

読みすすめていると、あちこちに違和感があったり、これが伏線だな、とわかりやすい展開です。

最終的に、2代目会長がごく普通のおばさんになっていて、宗教団体のカルト性や神秘性に対して背を向けてしまったことが、教団No.2にとっては不都合な真実だったということを描き出しています。

初代は普通の医師、2代目は神格化されることを拒否したとき、ピラミッドの頂点を欠いた組織(ここでは宗教団体)が、どんなことをするのか?カルト化するのか?ということを描いているのかもしれません。

一気に読めて、展開もおもしろいと思いました。



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