【東野圭吾】「パラレルワールド・ラブストーリー」

映画化された「パラレルワールド・ラブストーリー」読了。


初出は1995年なので、ほぼ四半世紀前の作品です。

スマホの代わりに、固定電話と留守電が登場してくるのが、時代を感じさせますが、テーマは今風なので、読みだしたらとまらないかもしれません。






バーチャルリアリティ(VR)か?と思いきや

冒頭の20ページほど読んで、これは「クラインの壺」の逆バージョン?

と感じたのですが、読み進んでいくうちに、違うことがわかりました。

登場人物はVRの研究者という設定なのですが、「パラレルワールド・ラブストーリー」では、記憶がテーマとなっています。

理系作家の東野圭吾さんらしく、VR技術を構造的に解説していますが、舞台設定の味付けといったところに終わっています。


記憶の書き換えは誰の脳でも起こっている

人為的に記憶を書き換えなくても、人間の脳内では、日頃から記憶の書き換えが行われています。

辛かった思い出が、いつのまにか辛さだけが取り除かれ、楽しい記憶だけになる。

それが記憶の書き換えです。

苦しい記憶や、辛い記憶が残ってしまうと、人間は生きられないからかもしれません。

パラレルワールド・ラブストーリー」では、記憶の書き換えが人為的にできることを発見した主人公・敦賀崇史の親友・三輪智彦が、いつの間にか、姿を消してしまいます。

そして、敦賀崇史の記憶のなかでは、古い記憶と、書き換えられた記憶とが混在し、次第に混乱していきます。

自分の恋人の津野麻由子は、三輪智彦の恋人だったのだろうか?

どちらが真実なのか?

混乱しながらも、主人公・敦賀崇史は、真実へとたどり着きます。


書きすぎてラストが面白くない?

途中までは、設定と記述のうまさに引き込まれてしまうのですが、ラストは?という感じです。

書かないなら書かないで、「クラインの壺」のように、謎のままに終わらせることもできたはずなのですが、中途半端に書いちゃった感じなのです。

おそらく、三輪智彦が姿を消した理由、その悲しさを書きたかったのだと思うのですが、「容疑者Xの献身」ほどには成功していないのです。

友情と恋のどちらを取るのか、そして2人の男から愛された女はどうするのか?

映画のほうでは、どのように描かれるのでしょうか。

今から、映画が楽しみです。

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