「双頭の龍―小説・田中角栄と周恩来」読了。
最近の田中角栄ブームの先駆けともいえるフィクション。
日中国交回復40周年を記念して2013年に発刊され、この小説を原作とした映画化も決まっていたようですが、どうも実現していないようです。
双頭の龍―小説・田中角栄と周恩来 | ||||
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実現しなかったのは、2013年におきた尖閣諸島問題のため、でしょう。
2012年9月に、20億5000万円で日本政府が購入し、それまで私有地だった島々を国有化したために、日中関係が最悪な状態におちいったことは覚えていらっしゃる方も多いと思います。
この当時、中国とビジネスしていた方たちは、「やっかいなことになったな」と口々に言っておられました。
実際に、日中国交回復40周年の2013年に予定されていたイベントがキャンセルされたりして、広告関係者にはけっこうな打撃でした。
そういうことを思い出しながら読みはじめたのですが、すぐに物語に引き込まれました。
すいすいと読めます。
田中角栄と周恩来の青春
本書で描かれているのは、田中角栄と周恩来の青春です。田中角栄という人物の生い立ちは、さまざまに報道され、描かれているのでご存じの方は多いと思います。
若き日の田中角栄が、戦時中は中国に派遣されていて、そこで中国語を理解できるように勉強していて、芸人親子と交流があった、ということになっています。
芸人親子と交流があったという部分は、フィクションだと思いますが、これが伏線となっていて、ラストにつながるという設定です。
一方の周恩来は、パリに留学する前に日本に留学しており、明治大学に席を置いていました。
ここで、周恩来は忘れられない経験をすることにより、日本との国交回復は自分の使命である、と確信します。
ふたりの若き時代の経験が、奇跡ともいえる国交回復を成し遂げさせたのだ、というストーリーなのです。
脚本家ならではの着眼点
著者の石森史郎氏は、テレビドラマや映画の脚本家として活躍している方。主な作品として、
「夜霧よ今夜もありがとう」
「愛と誠」
「銀河鉄道999」
「おれは男だ!」
「仮面ライダー」
「ウルトラマンA」
「必殺仕事人」
などがあり、1970年代に大活躍した方のようです。
とくに、「仮面ライダー」「ウルトラマンA」「必殺仕事人」は、わたしの年代だと、おなじみの作品。
そんな著者だからでしょうか、頭のなかで映像化がたやすくできる、そんな小説でした。
あきらかなフィクション部分が、本来なら知りえない、政治家の本音や信念を形作ることになる動機となっているなど、とても人間臭いドラマになっています。
映画を観たい!
日中国交回復40周年の2013年には映画化がかないませんでしたが、50周年の2023年でも良いので、ぜひ映画として観てみたいです。大筋はこの物語のままで良いと思いますが、田中角栄の青春時代、周恩来の青春時代をもっと深めてもらって、ふたりの青年が、それぞれ龍となっていくさまを描いてほしいと思います。
周恩来たちの日本留学: 百年後の考察 (国際日本学とは何か?) | ||||
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