「扉は閉ざされたまま」読了。
岡嶋二人さんの「そして扉が閉ざされた」を再読しようと思って購入した時に、アマゾンのレコメンドで登場してきたので、あわせて購入しました。
扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫) | ||||
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2005年に「このミステリーがすごい!」第2位に選ばれたという本作。
さぞかし読み応えあるんだろうな、と期待して読み進めたのですが、正直なところ、食い足りない感じでした。
わたし自身、この手のミステリが得意ではないのかもしれませんね。
大邸宅を舞台にした密室
岡嶋二人さんの「そして扉が閉ざされた」は、複数の男女が、事故で死んだと思われた娘の死を疑う母親に核シェルターに閉じ込められるところから物語は始まります。一方の石持浅海さんの「扉は閉ざされたまま」も、男女複数名が、成城にあるセキュリティ堅固な大邸宅に宿泊するところから物語が始まります。
どちらもお金持ちのお宅が舞台。
核シェルターに閉じ込められて、事故当時のことを語りだす岡嶋作品と、仲の良いサークル仲間が久しぶりに出会って語り合う石持作品は、はじまりは異なっても良く似た物語なのです。
違うのは、「扉は閉ざされたまま」で閉じ込められたのが被害者だということです。
そして扉が閉ざされた (講談社文庫) | ||||
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カロリーメイトと高級ワイン
「そして扉が閉ざされた」を象徴するのがカロリーメイト。密室に閉じ込めた母親が用意した食料です。
ミネラルウォーターがないあたりに時代を感じます。
「扉は閉ざされたまま」は、飲み仲間という設定なので、高級ワインと珍しいウィスキーなど、食事風景が豊かです。
作中では、これらのお酒がきっかけになって、すでに殺されている被害者の部屋に何度もアクセスすることになります。
「扉は閉ざされたまま」の殺人者は被害者を隠しておきたいために、話術でいろいろと策を弄しますが、殺人者と同じくらいによく見て考えることができる女がいたために、女にはすべて見透かされてしまうのです。
臓器移植がテーマ
「扉は閉ざされたまま」のテーマは臓器移植。臓器移植に承諾している方って案外多いと思いますが、提供を受ける患者さんのことを身近に感じている人は少ないかもしれません。
このテーマが理解できてしまうと、殺人の動機もすっかりわかってしまって、後半は読み切るために読みすすめました。
ワクワクもなければ、どんでん返しもなく、淡々と男女二人の会話が続き、伏線解説が進むのです。
おもしろくなーい!
「扉は閉ざされたまま」が評価されたのは臓器移植に新たな視点を与えたからだと思いますが、ミステリとして読んだとき、なにがおもしろいのかさっぱりです。
何度も書きますが、わたしが、この手の作品が得意じゃないのです。
「そして扉が閉ざされた」は、密室ですが、非常に動的な作品です。
密室からなんとか脱出しようとする姿や、事件当日を回想するシーンなど、どちらも動きがあります。
実は7割ぐらい読んだところで、遺体を移動した犯人はわかってしまって、そのあとは終わりまで読むという時間を過ごしましたが、最後の最後まで読者を裏切る仕掛けがあって、最後の1ページまで楽しむことができました。
「扉は閉ざされたまま」は、会話中心に心情を描いているので静かな物語。
動きがない、という点では、一田和樹さんのサイバーミステリも物理的な動きはほとんどないのですが、静的な作品と感じたことはありません。
この違いは、やはり心情とか認識などを語ることでミステリを成立させるような作品は、わたしは苦手、ということだと思いました。
まったく知らなかった著者の作品を手に取ってみてはじめて、自分の好みが再認識できる、ということがわかりました。
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