【前川 裕】「クリーピー」





映画「クリーピー」を観て、さっそく原作本を購入しました。


映画は、画面から緊張感が伝わってくるとっても気持ち悪い、まさにクリーピーな内容で、この手の内容のものを好んでご覧になる方にはおすすめです。

最近多くある、テレビドラマに出来なかったから映画にしたのかな?
この装置にお金をかけたかったから映画にしたのかな?

というような、画面から緊張感が伝わってこない映画だと寝てしまう私ですが、この映画は寝ませんでした。


ちなみに最近のもので寝てしまったのは映画「探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海」です。

原作を読んでおりませんが、読みたくなるような作りではありませんでした。残念。

さて、原作の「クリーピー」です。

クリーピー (光文社文庫)

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大学教授が探偵役

主役の大学教授(映画では西島秀俊)が、犯罪心理学者で、高校時代の同級生で警察官の野上(映画では東出昌大)の依頼で事件に踏み込んでいく、というストーリーで、映画の設定と若干ちがいます。

映画では、香川照之演じるところの隣人の異常性を描くいっぽうで、妻が隣人に取り込まれていく様子に違和感を感じる大学教授は、殺人事件の解明を進めていながら、自らも被害者となっていきます。

元刑事という設定も原作とは異なっていて、映画のほうの大学教授はアクティブですが、原作では受け身です。

そして原作では、妻は取り込まれたりせず、むしろ主役の大学教授が、ひろく張り巡らされたクモの巣に落ちていくのです。

そして、映画を見た人にはまったく意外な結末が待っています。


映画は原作の前半部分

原作の「クリーピー」の前半部分のみを取り出し、わかりやすく、ホラー感たっぷりに映像化したのが映画「クリーピー」なのです。

最後まで読んだ印象は、原作の「クリーピー」は気持ち悪いサイコスリラーではなくて、家族関係というものがテーマの犯罪小説。

この原作をもとに、視点を変えてまったく違う映画をつくることも可能だな、と読了後におもいました。

それくらいに、ストーリーの重心が変わっていく物語なのです。

わたしが読んだ感じだと、3部構成になっています。

1部が、映画「クリーピー」にある奇妙な隣人と事件の数々。
2部が、同級生野上の告白を中心とした新たな展開。
3部が、10年後に大学教授が発見する新たな視点。

これが、ときにイラッとさせられる、ちょっと鈍くさい大学教授によって語られていくのです。



鈍くさい大学教授の非常識

鈍くさい、といえば、いまどきの大学教授が、学生とふたりで食事をするなんてありえなーい、と感じました。

学生とプライベートな時間を持つときは3人以上が鉄則です。
これは常識。

なのですが、これがその後のストーリー展開上必要なことなので、スケベ心を隠しつつ女子学生と毎週のように夕食をとる、いまさら存在しないだろう大学教授という、主役の愚かな行動(しかもたびたび出てくる)を読まされます。

映画でも違和感たっぷりの場面があります。

どんなに人気のある講義であっても、学生全員が興味津々、という感じで講義を聞いていることはないし、満席ということもほぼありません。

人気教授の場合でも、大きな教室で7割埋まってるくらいが普通です。

しかも、研究室から見える中庭にも学生がたくさんいるのですが、これも違和感ありました。

演出なのかもしれませんが、現役の大学生を毎週見ている者として、大学でのシーンは気持ち悪かったです。

さて、本作には続編があります。

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こちらも大学を舞台にしたもの。

大学職員が、女子学生から指導教授のセクハラの相談を受けますが、その女子学生は、大学内の女子トイレで惨殺死体となって発見され、しかも事件は、女子学生連続殺人へと発展して、かつて猟奇殺人事件を解決した高倉孝一(主役の鈍くさい教授)もまた、事件の渦中に巻き込まれていく、というストーリー。

映画「クリーピー」の興行収入次第では、続編が、それこそ続々と出てきそうな原作小説です。




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