「「お金」で読み解く世界史」やっと読了。
本書は、今年の春に出版されました。
直後に購入して読み始めたのですが、途中で挫折して放棄しておりましたが、夏休みということもあり、再び手にとりました。
まず、なぜわたしは、途中で挫折したのでしょうか?
歴史オタクでもある私にとって、「〇〇の世界史」的な本は大好物です。
過去には、
【マーク・カーランスキー著 山本 光伸訳】 「塩」の世界史―歴史を動かした、小さな粒
塩の世界史(上) - 歴史を動かした小さな粒 (中公文庫) | ||||
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とか、
【ジェイコブ・ソール著 村井章子訳】 「帳簿の世界史」
帳簿の世界史 (文春文庫 S 22-1) | ||||
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とか、
【サム・キーン著】【松井信彦訳】「スプーンと元素周期表」
スプーンと元素周期表: 「最も簡潔な人類史」への手引き | ||||
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とか、
どれも大変興味深く、また楽しく、おもしろい世界史の本を読んできました。
なぜわたしは、「「お金」で読み解く世界史」は、途中で挫折したのでしょうか?
年代別に「お金」の歴史をサマライズ
わたしが、いったんは本書を放棄した最大の理由は、歴史の参考書のような文章が原因だと思います。歴史的事実が年代順に羅列されている、という印象がぬぐえません。
歴史オタクのわたしにとって、スパイスの効いていないカレーのような感じで、ほぼ既知のことばかりなのです。
前述した「塩の世界史」とか「帳簿の世界史」、「スプーンと元素周期表」も、年代別に歴史的事実を書いているわけですが、ほとんど知らないことだらけ。
これらはニッチなテーマであるがゆえに、知らないことが多く、好奇心がそそられて読み進めてしまいました。
人間ドラマがほとんどない
もうひとつの理由は、歴史のおもしろさの一面でもある人間ドラマの記述がないこと。「お金で読み解く世界史」
というタイトルに、どろどろとした人間ドラマを期待しませんか。
わたしは期待しちゃいました。
秦の始皇帝の父とも噂される呂不韋は、大商人でしたが、彼がお金についてどんな考えを持っていたのか、知りたくないですか。
「塩の世界史」では、インドのガンジーが、イギリスによる塩の専売に対して不服従運動をしていたこと。
「帳簿の世界史」では、国王の多くが帳簿をみることを嫌がったなか、ルイ14世は積極的に目を通していたけれど、財政が悪化してくると帳簿を放り出したこと。
「スプーンと元素周期表」では、経済的、戦術的に重要な元素をもとめて戦争が起こっていること。
これらの本からは、今でも思い出すことができる歴史を学ぶことができましたが、「お金で読み解く世界史」からは、人間ドラマ、つまり欲望によって動いたであろう歴史を感じることができないのです。
人間に焦点を当てた文章であったなら、もっと楽しく読めたに違いありません。
近世以降の「お金」の歴史がない
本書には、資本主義が誕生するまでの歴史は書かれていますが、資本主義誕生以降の歴史は書かれていません。なので、アダム・スミスは登場しません。
イギリスの産業革命も書かれていません。
「お金」の重要性、多様性は、むしろ資本主義誕生以降のほうが、興味深いと思うのですが、そういう方面は経済学者にゆずっています。
本書が、途中で本を閉じたくなる原因は、歴史の参考書以上でも以下でもない、単なる歴史事実をつなぎあわせたものでしかないからだと思います。
それでも、筆者の研究成果や、個人的な感想や推測などがもっと書き込まれていれば、なるほど!と納得することもあったと思います。
しかし、最後の最後まで、参考書でした。
「お金」で読み解く世界史 (SB新書) | ||||
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