上橋 菜穂子
神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫) | ||||
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神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫) | ||||
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本作は、チャグムが主人公の前作「虚空の旅人」よりも時間的にすこし前、バルサとタンダの周辺で起こったできごとが描かれています。
舞台はロタ王国。
「虚空の旅人」で、チャグムにすぐに協力してくれた王様の国です。
世界中にある民族差別の動機?
この国の建国には、血なまぐさい神を殺した、というストーリーがあります。そのため、血なまぐさい神を生み出した種族と、それを排除した種族、そのときに交わされた盟約があり、これが事件の背景となっています。
そして、暴力(殺戮)を生業としているバルサが、そのことが人生におよぼす闇を、まだ子供である「神の守り人」に知ってほしくない、という動機によって、深く関わっていくという物語です。
いま、世界中にある民族差別は、こんな動機からはじまっているのだろうな、と感じさせてくれる一冊でした。
たとえば、タルハマヤとよばれる殺戮の神を生んでしまったタル族は、ロタ族から差別され、さげすまれています。
しかし、強く差別されると、建国の物語が事実ではない、と主張する者たちが現れます。
実際、建国物語がすべて真実、という国はありません。
歴史がそれを証明しています。
本書はファンタジーですが、世界のあちこちでおこっている民族差別と、それを起因とした紛争のひとつを描いているといっても過言ではありません。
人々の考えや行動が、さもありなん、と感じるほどにリアルなので、バルサの献身的な姿が印象に残りました。
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