【伊勢谷武】『アマテラスの暗号』

アマテラスの暗号』読了。


日本ユダヤ同祖論(日ユ同祖論)について、謎解きフィクション風に仕立てた作品です。

筆者は、主人公と同じく、ゴールドマン・サックスに在籍していたという経歴の持ち主。

英語版も上梓されていて、あとがきにもあるとおり、日本ユダヤ同祖論を信じているようです。


日本ユダヤ同祖論は、1878年にスコットランド人のニコラス・マクラウドの著作『日本古代史の縮図』『日本古代歴史図解』によって、体系化されたようです。

古くから研究され、ほかに書籍化されているものも多いので、内容の半分以上は、どこかで目にしたり、読んだりしていると感じました。

が、最新のDNA研究結果などを取り入れ、日本人と中東の人々との共通性、ユダヤ教とユダヤ人、そして旧約聖書にまで深く言及している点で、この作品が、日本ユダヤ同祖論の決定版と言っても良いのでないでしょうか。

テンポよく進行するので、可能であればイッキ読みしたい作品です。




梅原猛『隠された十字架』

参考となる著作の第一は、『隠された十字架』でしょう。


内容は、法隆寺と聖徳太子のことを取り上げているのですが、それに関連して出雲大社のことが出てきます。

大学生のころに読んだときは衝撃でした。

二礼四拍手一拝には、特別な意味があることを説明しています。

本書のなかにも出雲大社が登場するので、出雲大社の不思議について知っていると、理解が早まります。



今井仁『空海の秘密

こちらは空海に迫った歴史ミステリーですが、秦氏がユダヤ人であることを詳しく説明しています。

この本を先に読んでいたので、半分くらいはこの本がネタかも、と感じてしまったほどです。

剣山にアークが隠されているかも、というあたりはまったく一緒です。

なので、こちらも関連書籍としておすすめです。




ユダヤ人が日本に来ていても不思議はないが・・・

本書の結論は、だいたいこんな感じでしょうか。

1.天皇がひとりで執り行う大嘗祭は、イエス・キリストの復活を真似ている

2.古代に日本にやってきたユダヤ族は、一神教ではなかった

3.ユダヤ教は神道に包含された

4.秦氏はネストリウス派のキリスト教者である

5.失われたアークは日本に存在する

書き忘れていることがあるかもしれませんが、時系列でいくと、古代にユダヤ族が日本列島にやってきて、国生みなどの神話にその痕跡を残した。

その後、ユダヤ教は神道として信じられる宗教に変化。

その過程において、神々の名前と実像がさまざまに変容し、ユダヤ教は隠れてしまったが、神の名の乗っ取りが行われた。

最後の仕上げをしたのは秦氏である。


ユダヤ人は、世界中に存在するので、日本にやってきても不思議はなく、むしろ「来なかった」ということにはならないと思います。

本書にもあるとおり、日本とユダヤの共通点もたくさんあって、それはそれで興味深いです。

しかし、日本ユダヤ同祖論は、イスラエルにとって有利な外交戦略ではないか?と考えてしまいます。

日本以外に、イギリスや韓国などにユダヤ同祖論があるようですが、ユダヤと同祖であるといって親近感を持ってもらうことが、最終的な目的なのでは?

なんといっても、イスラエルは不安定な環境にある国家なので、いろいろな国のバックアップが欲しいはず。

キリスト教における偏見や、人種差別が比較的少ないエリアや国に、ユダヤ同祖論が古くから存在するのは、そういう理由からなのではないだろうか?とも感じてしまいます。

いずれにせよ、おもしろい本であることにはかわりがないので、ぜひとも読んでいただきたいと思います。


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