『黒冷水』読了。
羽田圭介さんが17歳で文藝賞を受賞した作品です。
壮絶なる兄弟ゲンカ
一言で説明すれば、3歳違いの高2と中2の兄弟の物語。
お互いに嫌悪しあい、とくに兄は、弟が自分の部屋を漁ることに怒りを溜め込んでいきます。
読み進めていくうちに明らかになる、兄弟の心理戦は、マウントを取り合うスクールカーストの物語のようにも見えてきます。
そして、兄弟ゲンカは、単なる兄弟ゲンカから、お互いに巧妙かつ悪質なものへと変貌していきます。
兄弟ゆえの確執
これまでにも、多くの文学作品において兄弟・姉妹の確執が描かれてきました。
姉妹ものは名作も多いように記憶していますが、兄弟もので、ここまで描かれているものはあまり記憶にありません。
家族であるからこそ、憎悪も果てしないとも言えるのですが、相手に怪我をさせたり、辱めたりする心情には、ついていけないも部分も。
ところが、あまり共感できないままに、ラストまで一気に読めてしまうのですから、名作なのでしょう。
それは物語だった
最後の方は、兄が弟を救って、なんとなくハッピーな感じに終わるのか?とおもいきや、実はここからが本編だったのか、というラストです。
日々、弟に関して思っていたことをノートに書き留めていた兄が、それを小説として公表することを思いつきます。
それをたまたま読んだ弟が、兄に対して暴力を振るうのですが、兄は空手の有段者で弟は半死半生のまま、小説は終わります。
兄弟の、どちらが良いとか悪いとか、そういう判断はできない作品だと感じました。
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