原田 マハさんの「総理の夫 First Gentleman」読了。
女性で最年少総理が誕生するという近未来フィクション。
女性総理の夫で、日本初の「ファースト・ジェントルマン」となった相馬日和の日記というスタイルでつづられた本書は、こんな女性総理がいたら、と明るい未来を感じさせてくれました。
財閥の次男坊で野鳥を研究する総理の夫
まずは設定から。総理の夫、こと、相馬日和さんは、日本を代表する財閥の次男坊。
つまりお金には困っていない。
おまけに野鳥を研究する学者。
まるで黒田清子さんのようではないですか。
当然のことながら、女性に縁遠かった日和さんが、ある日、ビビビッときたのが真砥部凛子。
国際政治家。
父は作家、母も国際政治学者という、一般にはいそうでいない女性。
その凛子さんと結婚して10年、少数野党の党首として政治家になった妻は、ときの勢いで総理大臣になってしまうのでした。
総理の夫 First Gentleman (実業之日本社文庫) | ||||
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総理大臣の夫としての生活
物語の前半は、総理の夫となった日和さんの戸惑いと驚き、そして、以前よりかなり不自由になった生活が描かれています。総理官邸に引っ越して早朝の野鳥観察ができなくなったり、毎日専任広報官に職場まで送り迎えされたり。
同僚と気軽に出かけておしゃべりすることもままならず、総理の夫の生活は窮屈そのものです。
そして、そんな窮屈な生活を強いられている日和さんに、ある日、魔の手が忍び寄ります。
ガードの甘い、総理の夫のスキャンダル
日和さんは、職場の後輩女子とふたりで自宅に帰り、資料となる本を探すのですが、フラストレーションのたまっている日和さんにやさしく接してくれる後輩女子に、ついフラフラっとしそうになります。そして、タクシーのなかで涙をながす後輩女子とのツーショットが盗撮され、ついに日和さんは総理の弱みになってしまいます。
スキャンダルを未然に防ぐには、金を払うしかないと大物政治家に引導を渡される日和さん。
ところが、この盗撮は大物政治家が総理になるために仕掛けたワナだったのです。
女性総理だからこそ出産
そんな危機を乗り越えた凛子総理と日和さんですが、第二次相馬内閣のマニフェストを試されるかのような、凛子総理の妊娠。もろ手を挙げて喜ばしい妊娠・出産が、総理という地位にあると、喜んでばかりもいられません。
しかし、物語は、あくまでも理想を追求する形で、総理の出産とイクメンとなった総理の夫でしめくくられます。
軽快でユーモアあふれる夫婦の物語
設定は異色ですが、つまりは夫婦の物語。共働き夫婦世帯が、専業主婦世帯を超えた現代。
妻が夫より高収入だったり、地位が高かったり例は珍しくありません。
そんな時代でも、もっともありそうにない設定が、本作「総理の夫 First Gentleman」なのではないでしょうか。
妻が国家運営の中枢に置かれたとき、夫は何をすべきなのか、どうやって妻を支えるのか。
女性が読めば痛快、男性が読めば非現実的。
そんなおとぎ話ではありますが、一読をおすすめします。
絶対に楽しめるエンターテインメントです。
サロメ | ||||
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