【冲方 丁】「十二人の死にたい子どもたち」


十二人の死にたい子どもたち」読了。

冲方 丁さんが、初めて描いた現代物であり、構想から12年という物語です。

タイトルを見て、すぐに映画「十二人の怒れる男」を思い出しました。

映画「十二人の怒れる男」は裁判物、密室劇の名作として知られていますが、「十二人の死にたい子どもたち」も、まるで裁判でも行っているかのような熱心さで語り、物語の謎が解かれていきます。

十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)

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集団自殺のために集まった12人の少年少女

物語は、ネットを通じて集まる少年少女たち、ひとりひとりの行動を描くところからはじまります。

集まる目的は、集団自殺。

もはや、ニュースではおなじみの設定となってしまっていますが、安易なものではありません。

管理者が、さまざまなハードルを設け、自殺の意志が固い12人を選んでいます。

そして、集団自殺をするために集まった場所で、13人目が横たわって(すでに死亡?)発見され、なぜ13人いるのかが謎となり、12人の少年少女の議論がはじまります。

予定していた人数よりも一人多いというのは、SF系では多い設定ですね。

萩尾望都さんの名作「11人いる! 」は、そんな典型的な作品です。

11人いる! (小学館文庫)

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まるで裁判員裁判のようなストーリー展開

映画「十二人の怒れる男」がベースとなっているかのように、物語は展開していきます。

12人の少年少女が、密室で、13人目は誰なのか?

そして、自殺なのか?他殺なのか?

さまざまな疑問を、建物に到着した順番、犯人が残した遺留物、そして自殺したい理由など、外堀から内堀を埋めるようにストーリーは展開します。

ミステリーを読み慣れた方なら、ある程度、予測できるかもしれません。

自殺を望む少年少女は、それぞれ深い心の闇や、死に至る病など、重い十字架を背負っています。

これによって、少年少女の無理のない性格設定がなされているので、違和感はまったく感じませんが、キャラクターの役割が明確過ぎて、ちょっと型にはまった印象はぬぐえません。


議論を通じて生きる意欲を取り戻す

そして、12人の少年少女は、議論のすえに集団自殺をやめることを決意します。

わかりやすいハッピーエンドなのですが、手放しで喜べない終わり方、とでも言えばよいのでしょうか。

この物語には続きがあるのです。

十二人の死にたい子どもたち」は、2019年1月公開予定で映画化されます。

映画では、どのような展開になるのか、そして物語はどう終わるのか、とても興味があります。

少年少女には可能性がある、他人の意見を聞き、知見を深めることでネガティブからポジティブに変わる、つまり脱皮します。

この物語は、大人ではない少年少女だからこそ、思い込みや環境に左右されて自殺という選択肢を選んでしまった彼らが、精神的に成長するストーリーでもあります。

そういう意味では、中学生や高校生が読むと良いのかもしれませんが、私は、議論しているつもりになっている大人こそ、読むべき小説だと感じました。

冷静な議論は、日本人は苦手です。

しかし、「十二人の死にたい子どもたち」は、なぜかとても冷静なのです。


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